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異世界が思ってたんと違う!  作者: 馬之群
第2章 調査
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第35話 平穏と不穏

「つまりルーチェはアンタの家で養ってる家畜ってことね」

「食べないよ。ただ一緒に遊んだり散歩したりする仲なの」


 既に何時間か説明してるんだけどな。


「異種族恋愛?」

「恋人とはまた違うんだけど……」

「恋愛感情もないのに、同じ屋根の下、異種族の面倒をみてたの?」

「そう。可愛いから。癒しを求めてるの」


 フローラは肩をすくめた。家族制度もないこの世界でペットを飼うという概念を理解してもらうのは難しい。


「アンタって結構な金持ち?」

「普通。向こうじゃかなりのヒトがペットを飼ってるよ」

「全体的に文化レベルが高いのかしら?」

「圧倒的に低いよ」


 フローラとオレは顔を見合わせた。分かり合えそうにないなあ。

 ルーナが起き上がって目をこすりながらやってきた。黄色いパジャマがかわいい。


「にぃにはどうしたノ?」

「龍脈に行ったよ。ルーナちゃんにこれを渡してって」


 オレは赤い宝石をルーナに渡した。みるみるルーナの目が潤む。


「あたしを置いて行っちゃったノ?」

「龍脈災を止めるためにすぐ行きたかったんだってさ」

「にぃにに置いてかれた~!」


 ルーナはわんわん泣き出した。オレはお菓子や宝石で機嫌を取ろうとしたが、無理そうだ。


「ルーナの言う『にぃに』って、炎の魔物のこと?魔龍だったの?」

「詮索しないんじゃなかったの?」

「道理で強いわけだわ」


 フローラの方から森のような香りが漂ってきて、ハーブティーのようなものをルーナに差し出した。ルーナの涙は止まりそうにない。


「今日はここ泊まって良い?」

「いいわよ。元々ウチも泊まるつもりだったから」

「ありがとう」


 オレは久し振りに湯船にゆっくりと浸かった。きめ細やかな泡のお風呂はラベンダーの香りがする。バラの花びらのようなものが一面に浮いていて、時間と共に溶けていく。なお、特注の魔法服を脱いだ状態で入浴しているので、長風呂をすると病気になる。お風呂から上がると、フローラとルーナが仲良く遊んでいた。


「夜もやる?ゲーム」

「ルールが分からないから、まずは見学させて」


 少し見ただけで、かなり面白いことが分かった。ホログラムを使ったRPGのようなもので、職業を選択して勇者の少女の仲間になって魔王を倒すゲームだ。フローラは吟遊詩人、ルーナは格闘家を選んでいる。魔物との戦いに見応えがあって、吟遊詩人は音ゲー、格闘家は格闘ゲーの形式で技を出している。連携技が決まるとかなりアツい演出が入る。


「かっこいいなあ」

「夜はガンマンでプレーしてみたらどう?ま、ウチらの足を引っ張らない自信がなければずっと見ててもいいのよ?」

「ちょっとだけやってみていい?オレ、向こうでも銃を撃つゲームはそこそこの実力だったんだよね」


 数分後、オレはこの発言を後悔することとなった。ムズイ。魔物の出てくるスピードが速すぎる。撃とうとすると手遅れになっている。初見でクリアできるレベルじゃないだろと思いながら、二人の神プレーに支えられて魔王の所まで辿り着いた。

 かっこいいBGMに合わせてフローラが技を出し、ルーナが魔王を殴ったり蹴ったりして、オレは弱点に銃を撃ち込む。協力して倒している感じが楽しい。


「魔王強かったネ!」

「ルーナちゃんも最後の技良かったよ」


 ストーリーもキャラデザもゲーム性もいいなあ。勇者の少女かわいいし。


「悔しいな。オレも次までに練習しておくよ」

「次はハードモードに挑戦しましょ」


 オレは久々にのんびり遊んで、泥のように眠った。夢の中で飼い犬だった頃のルーチェが落ち込んでいるオレを慰めようと寄り添ってくれていた。起きて辺りを見渡して、ルーチェがいないことを思い出して自然と涙が零れた。


「起きたの?シャドウの修理が終わったらしいわよ」

「おはよう。じゃあ行ってみようかな」


 ルーナはまだ眠っている。まだ小太陽しか出ていない。


「ルーナをお願いしてもいい?」

「連れて行ったら?」

「シャドウが襲ってくるかもしれないから」

「アンタは大丈夫なの?」

「さあね」


 オレは欠伸をした。


「さあねって……」


 身支度を整え始める。この星の夜の短さにもすっかり慣れたものだ。辛いサンドイッチを食べて、扉に手をかざした。


「気を付けて」

「心配してくれるの?ありがとう」

「べ、別にい?ルーナに泣かれたら迷惑だから、早く帰ってきなさいよね!」

「はーい、行ってきまーす」


 シャドウは地下室で椅子に拘束された状態だった。行けと合図され、オレは部屋の中に入った。シャドウのスイッチに手を伸ばす。スイッチを押すと、シャドウがパチッと目を開けた。藍色の目にオレの姿が映っている。


「おはよう、シャドウ」

「あ……ああ……」


 シャドウは目を見開きながら首を横に振った。何だこの、幽霊でも見たような反応は。


「シャドウ、オレのこと分かる?」

「危険、排除……」


 シャドウの拘束具がビキビキと音を立てる。オレは魔力銃を身体の後ろで準備した。


「落ち着いて!大丈夫だよ」


 シャドウは拘束具を引き千切った。


「魔物め!排除してやる!」

「オレは魔物じゃない!」

「嘘を吐くな!」


 オレは右肩を刺された。この服に防刃機能がないことは分かった。


「異種族友好!」


『異種族友好は既に発動している』


 発動していてこれなんだ。


「マスターは吾に魔物を殲滅するようお命じになったのに、吾は命令を遂行できなかった。吾が魔力切れで機能停止する前に、魔法蟲の生育場所近くの魔物は一掃しなければならなかったのに!」


 シャドウはオレの右肩に一層深く刃を突き立てた。


「全ては人類の大いなる発展のために!」

「オレは人類と敵対する気はないよ。何なら、魔物討伐を手伝ったって——うぅ!」

「吾は騙されない!魔物は全て、駆除しなくてはならない!」


 もう右腕は使い物にならない。オレはシャドウに足払いをかけて、よろけた所を押し倒し、魔力銃を額に突き付けた。


「どうして……」


 シャドウの頬に水滴が落ちる。オレは唇を噛んだ。


「どうして、わざと負けるんだよ、シャドウ!」


 戦闘用自律魔動機のくせに、こんな一般人に簡単に組み伏せられるなよ!

【作者のメモ】

・身体を清潔に保つ魔法道具はあるが、夜は気分的にお風呂に入りたい

・フローラがやっていたゲームは、ソードが剣士のキャラで最高記録を持っている。なお、シリウスは全キャラでハードモードクリアしている

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