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異世界が思ってたんと違う!  作者: 馬之群
第2章 調査
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第30話 仲直り

「申し訳ありません、サブマスター。ルーナ様が突然お倒れに!」


 シャドウが頭を下げる。フローラは挙動不審ながらオレの後ろに立っている。ルーナは相変わらず高熱でうなされている。


「流石に急性魔力欠乏症になったみたいね」

「魔力が戻れば治る?」

「そりゃもう、元気に襲い掛かってくるわよ」


 オレはナイフを取り出した。


「何してんの!?」

「そうだった。フローラは今のうちに逃げて。ルーナには上手いこと言っとくから」

「馬ッ鹿じゃないの!?そんなことしたら──」

「逃げないなら今すぐルーナを治すよ」


 フローラはオレと議論しても無駄だと思ったのか、近くの藪に姿を隠した。それでいいのかと思ったが、オレは手首を切ってルーナに血を飲ませた。だんだんルーナの顔色が良くなっていき、呼吸も安定していった。


「夜にぃ……?」

「怖い思いさせちゃってごめんね、ルーナちゃん」

「うぅん、あたしも怖くて暴れちゃってごめんネ」

「体調はどう?」

「大丈夫ヨ」


 さっきまでの辛そうな顔が嘘みたいに元気そうだ。


「そちらの藪にお隠れになっているフローラ様はどうなさるのですか?」

「シャドウ!」


 シャドウは小首を傾げている。口には気を付けろよ。本当にお隠れになるところだぞ。


「フローラねぇって、夜にぃのお友達?」

「まあね。できれば赦してあげてほしいな」

「もうルーナのことイジメないかナ?」

「それは間違いないよ」


 どうしたってフローラではルーナをイジメられないからな。


「じゃあ、ごめんなさいして仲直りしたいナ」

「だってさ、フローラ!」


 茂みからフローラがおずおずと現れた。


「ごめんね、ルーナ。ウチ、急に魔龍だなんて聞いて驚いて……」

「ルーナもごめんネ。フローラねぇ、あたしのお友達になってくれる?」


 ルーナはぷくっとした手を差し伸べた。あれ、オレは友達じゃないんだ?フローラは蔦のような手を伸ばして握手に応じた。


「ええ、ルーナ。改めてよろしくね」


 一件落着、か?しばらく警戒はしておくべきだろうな。


「じゃあ、オレたちはルーチェを探しに行くから」

「ウチも同行させて!」

「何で?」

「車が壊れちゃったし、仕方ないでしょ?」


 そう言われると弱い。


「分かった。邪魔しないでね」

「ハァ?何様のつもり?」

「置いていってもいいんだけど?」

「う……分かったわよ」


 フローラはしゅんとした。どうせなら情報収集しておくか。


「機械化人って珍しい?」

「どうしたの急に。腕とか脚とか怪我したヒトが機械化することはたまにあるわよ」

「全身機械化するヒトは?」

「前機王様以外では一人しか知らないわ」


 オレは身を乗り出した。


「そのヒト、女性?居場所は?」

「女性よ。居場所は知らないわ。お兄に定期的に会いに来るの。そろそろやってくる頃合いね」

「官邸に来るの?」

「家に来るわよ」


 シリウスの家の近くで情報を集めれば、機械化人やルーチェの情報を得られるかもしれない。


「じゃあ行ってみよう」

「サブマスター、複数人がこちらに近付いて来ております」

「目立っちゃったわね。急いで離れましょ」

「あたしの背中に乗ったラ?」


 ルーナは緑青色の龍に姿を変えた。その大きさはサラブレッドより一回り大きいくらいで、二人くらいヒトが乗っても大丈夫そうだ。


「亜龍に化けられるの?」

「何にだって化けられるヨ!」


 ルーナは尻尾をぶんぶん振っている。


「三人乗れるかな?」

「サブマスター、シャドウは走っていけます」

「夜と相乗り?冗談じゃないわ!」

「でも、フローラねぇは夜にぃの友達なんだよネ?」


 フローラが言葉を詰まらせた。下手なことを言ったらルーナと敵対すると心配しているのだろう。


「ルーナちゃん、同じ年頃の男女が相乗りするのは──」

「いいわよ。夜がいいなら」


 フローラがつっけんどんに言った。ヴェールがほんのり赤い。


「オーケー。時間がないしそれで行こう」


 ルーナがひざを折ってくれたので、オレはお礼を言って跨った。手綱なんてないので、たてがみに掴まっておく。フローラはオレの後ろに跨った。


「シャドウねぇも疲れたら言ってネ」

「お気遣いありがとうございます」


「あまり揺れないようにしてね。揺れそうな時は前もって──キャア!」


 ルーナが走り始めると、フローラがギュッと抱き付いてきた。バラのような芳香が漂ってくる。


「大丈夫、フローラ?」

「振り向いたら赦さないわ!」

「はいはい」


 これが美少女とはいかなくても、女性の見た目だったらなあ。いや、邪な気持ちではなく、元の世界を懐かしむ意味でね?そんなオレの思いを振り切るかのように、ルーナは軽やかに駆けていった。


 ルーナが止まる頃には、オレは軽い乗り物酔いと尻の痛さで気分が悪くなっていた。フローラはと言うと、バジルのような香りのミストを吹き出していた。やたらと機嫌が悪そうな所を見ると、乗り心地は快適ではなかったらしい。


「ルーナちゃん、ありがとう。人間姿になってくれる?」

「うん!」


 オレたちは町に入っていった。相変わらず地球では見られない光景が広がっている。空中を蛸のように泳ぐ生き物、歩く木のような生き物、頭からラッパの生えた生き物など異形しかいない。中には機械が空を飛んだり道を走ったりしているが、乗り物なのだろうと感じた。


「あ、あれ!例の機械化人よ」


 フローラが指さした先には、象牙色の兵器のような機械が歩いていた。四本の脚と二本の銃のような腕、楕円形の本体には上部に二つの小さな穴、下部に大きめの穴が開いている。


「シャドウ、ルーナちゃんを頼んでもいいかな?できるだけヒトに会わないように気を付けてもらえる?」

「かしこまりました、サブマスター」


 ルーナは、ほっぺをぷくーっと膨らませている。かわいい。でも、魔龍を操るという相手に魔龍のルーナを会わせるわけにはいかない。


「フローラは?」

「行かないと思う?」


 オレはニヤッと笑った。


「思わない」

【作者のメモ】

・フローラがミストを出しているのは、車酔いで吐いているようなもの

・町を行く機械はほとんどが魔動車

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