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異世界が思ってたんと違う!  作者: 馬之群
第1章 生存
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第14話 魔法服、魔力銃、魔法機械

「亜龍の爪なんて、素材として使う機会が一生ないと思ってたよ~。せっかくだから使ってみよっかな~」

「どういう効果があるんですか?」

「敬語はやめてよ、新種くん。魔力流出阻害剤になるよ。普通のヒトなら慢性魔力増加症になるレベルの。新種くんは体内の魔力が多いから、これが必要になるんだ」


 メカは毒々しい赤紫の爪を何かの機械に放り込んだ。


「体温調整用の素材を雪狼にすると外気温氷点下50度からプラスの60度までの変化に耐えられるんだけど、魔素濃度による調整機能の異常が生じやすいんだよね~。氷狼に変更したら魔素濃度依存度が下がるけど、外気温が50度以上になると体温を調整できなくなる。新種くんはどっちがいい?」


 え、オレ?一言も分かんなかったんだけど。


「いや、オレはこの世界のこと何も分からないから、専門家にお任せするよ」

「雪狼でいいわ、機王様。外気温が50度以上で調整できなくなったら使い物にならないもの」


 代わりにフローラが答えてくれた。その後もオレにはよく分からない話が続き、素材が決定していった。


「亜龍の爪、雷呼貝の殻、雪狼の骨、燐火樹の枝、爆裂花の種子……」


 機械に次々と素材が放り込まれる。中で何か加工されているようだ。


「さ~て、素材を調合して染液を作り、魔法布を作りましょ。穴蜘蛛の糸で編んだ布は魔法の吸着性がいいけど、繊細だから加工に時間が掛かるんだ。何せ、想定必要魔力量は約1200蟲力(ちゅうりき)!ヒトは起動スイッチに触れただけで、急性魔力欠乏症になって即死するレベルの魔法具になるね」


 ピンとこないけど、取り扱いに注意が必要みたいだ。


「蟲力って魔力量の単位?」

「そうだよ~。一匹の魔法蟲が一時間に食う魔力の量が1蟲力。ちなみに、現在魔力量が測定されている生物の中で最高の魔力量である亜龍の魔力量が平均2000蟲力。ヒト最大の魔力量である魔王様は100蟲力くらいだったね」


 あのキモい蟲が基準になるのか。馬力のような概念ってことだな。


「待っている間に魔法機の保管庫に案内しよう!しゅっぱ~つ!」


 再び椅子が動き出した。地下室に向かっている。地下室はガラクタ置き場のようだった。雑然としている。埃っぽい。シリウスの家の地下室で見たような的がある。


「これ、懐かしいな~。『魔力銃1号、ばきゅ~んくん一世』だよ」


 メカは筒の付いた太い指輪のようなものを取り出した。黒光りしていて重厚感がある。ネーミングセンスだけが残念だ。


「魔法適性関係なく、身に着けるだけで誰でも攻撃手段を手に入れられる優れものだよ。火薬銃と違って、リロードの必要もなく、劣化も遅いんだ」

「すごいじゃないか!」


 ほしい!この世界で自立するためには絶対に必要だ。


「はしゃいじゃって、馬ッ鹿みたい。商品化できなかったってことは、欠陥品でしょ?」

「撃てはするよ~。ほら」


 メカは銃口をフローラに向けた。光線がフローラの横にある的を溶かした。的はじわじわと再生していく。


「ど、どういうおつもりですか!」

「副官殿を狙ったわけじゃないさ。使ってみる?新種くん」

「いいの?」


 オレはメカから魔力銃を受け取り、右手の人差し指に嵌めた。フローラの横の的に手を向ける。


「狙ってはいないと言っても──」


 撃ち方を知らないや。撃ってみたかったけど──


──バン!バン!バン!


 オレの右手から光線が三発放たれた。一発目は的を溶かし、二発目は壁にめり込み、三発目で壁が崩れた。沈黙がその場を支配する。静かに的と壁が再生していく。


「ひゅう、やるね~!これは魔力を食うんだ。Sランク魔法使いでも連射は厳しいんだけどね」

「ごめん。まさか撃てるとは……」


 オレは震える声で言った。


「い~よ別に~。被害もないし」

「ウチが死ぬとこだったでしょうが!」


 フローラのヴェールが赤くなった。


「誰も使いこなせないし、あげるよ、それ」

「オレ、お金持ってないんで」

「だ~か~ら~、あげるってば!使用して気付いたことを、暇なときにでも聞かせてくれればありがたいな~」


 試供品のような扱いにしてくれるということか。ありがたい。


「じゃあ、ありがたくもらっておくよ」


 オレは魔法銃を指から外してポケットにしまった。周りの物には迂闊に触れないようにしよう。オレは部屋の隅に残されたあるものに目を止めた。


「どうしたの?」

「あれは何?」


 オレが指さしたのは、人間の少女を模して造られた人形のような何かだ。髪や目は藍色で、全身が金属質に見える。あまりに人間にそっくりだ。これは人形というより──


「アンドロイド?」

「まさか知っているの?古代遺跡の前で見つかった魔法機械だよ~。確かに新種くんに似てるかもね~」


 古代遺跡?そんなところにどうして、アンドロイドが?


「動くの?」

「いや、起動スイッチを押しても無反応だ。解体して調べようかと思ったけど、起爆装置を抱えているみたいでね、何年も放置してある」


 電池切れかな?この世界の主なエネルギーは電気じゃないみたいだし。


「まあ、そんなものより、ぼくが作った魔法機器を見てよ!まだまだあるんだ~」


 メカに様々な発明品を見せられ、オレもいくつか試してみた。空を飛んだり、姿を変えたりして、夢のような時間を過ごした。

 メカの機械が鳴った。


「新種くんのための魔法服が完成したみたいだねえ。行こうか」

「うん」


 オレたちは立ち上がった。メカがフローラを指さす。


「副官殿はここにいていいよ。まだ遊び足りないでしょ?」

「彼の護衛任務があります。機王様と彼を二人きりにするわけにはいきません」


 信頼がないなあ。


「高魔力使用魔法具の初使用時には、安全性を確保する義務がある。機王命令だよ」

「う……分かりました。気を付けなさいよ、夜」

「うん。行ってくるね」


 オレとメカはフローラを置いて地下室を後にした。狭い部屋に入るよう促され、オレは入っていった。ドアが閉まった。透明な壁越しにメカが話し掛けてきた。


「さて、新種くん、ようやく副官殿から引き剥がせた。悪いけど死んでもらうよ」

「え……」


 しまった。異種族友好を掛けていない。殺される……。

【作者のメモ】

・この世界における敬語は、教養のある上流階級の者が、さらに目上の者に敬意を表して使うものである。中流以下の階級の者に敬語を使わせるのは、幼児や外国人に無理やり敬語を使わせるようなもので、恥とされる

・魔法蟲の移植可能量は魔力量の半分とされている。ただし、上限は30匹

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