第88話 大盤振る舞い
ダンジョンの床に倒れたままの、凛子さんとアイカさん。
もともとは焼肉をたかられた程度の間柄だったとはいえ、何より最近話したことのある数少ない人間の顔見知りだし、今では図らずも俺の眷属だ。
であれば、助けなければならないだろう。
「何か、使えるものはっ」
部屋を見回すと、前に時空の綻びからでたレッサーポーションは転がっている。時間的にはそんなに前ではないのに、レッサーポーションを手に入れたのは体感的にはかなり昔のような気がする。
結局、使う機会もないままに部屋の隅に転がり続けていたのだ。
なにせ、神域には強い再生効果があるのだ。俺の眷属たちには、このレッサーポーションは必要なかった。
――アイカさんたちには、どうだ。ドッペさんなら体にしまって運んでくれるだろう。
頭に張り付いたままのドッペさんを再び手で取ると、俺が何か言う前にふよんふよんと二度跳ねるドッペさん。
明確な否定の意見。
まあ、確かに対象は、神獣による状態異常だ。
レッサーポーション程度では治らないのは、想像にかたくない。今の状態で無駄なことをすら余裕がないのは確かだった。
俺が納得すると、いそいそと俺の頭に戻ってくるドッペさん。
「だとすると……アイカさんたちを神域まで運んでもらう? いや、さすがに皆手一杯だ。じゃあ、もう、あとは……でもあの猿の神獣は腹にベベちゃんの角の穴が空いてるから……」
俺がそこまで呟いた時だった。
覗いた覗き穴ガンマの先では、アビちゃんがちょうど敵の神獣の一体を倒したところだった。
大戦果だ。
これで、敵の残りの神獣は、九体。
そのほとんどがベベちゃんに襲いかかっていて、ジェリーベヒーモス達の献身で何とか捌いているような状況に見える。
そこを撹乱するにして、アビちゃんが上手く殺ったのだろう。
そのアビちゃんが、窒息させたらしい敵の神獣の体をかかげている。
そのタイミングのあまりの良さに、俺はアビちゃんとの運命すら感じた。
そう、アイカさんたちを神域まで運べないなら、作ってしまえばいいのだ。
ここに。
覗き魔の眼球スキルにより表示される左目の文字が変化する。
『神獣(席外)により、神獣(七席)の亡骸をシステムへ献上。アクセス不可領域への強制介入が可能となります。神域を作成しますか。使用綻びポイント【10】』
幸い、まだ綻びポイントはある。大盤振る舞いしすぎな気がしつつも、俺は告げる。
「神域を、作成」




