第82話 帰ってきました
あのあと、俺は無事に霊羅さんに卵を受け取ってもらえた。何だかとても嬉しそうに受け取ってくれたので、霊羅さんからしても理の目が示すように、何かあの卵に感じていたものがあったのかもしれない。
その後、もう一つのゲートも閉じ、それから周囲の時空の綻びをまわって、集められるだけ綻び石を集めた。そうして俺たちはいま、帰っているところだった。
帰りも、とても快く霊羅さんがバイクで送ってくれている。
非常に助かっているのだが、やはり運転が行きほどではないにしろ激しくて、かなり怖い。どうも俺はバイクの後部座席というものに慣れることは無さそうだった。
今も、バイクの車輪が何かに乗り上げ、ふわりとした浮遊感が襲う。
体が浮き上がり、思わず、運転をしている霊羅さんにしがみついている俺の腕に、力が入ってしまう。
こんな感じで怖さが減らないのには、もう一つ理由があった。
二つ目のゲートを閉じたときにも、一つ目と同じように四個パックの卵が出たのだ。そして、こちらの卵は俺が自分で片手で持ってバイクに乗っている。つまり片方の手は、腕だけで霊羅さんにしがみついている感じなのだ。
それに、手に持った卵が霊羅さんの運転の邪魔にならないようにしないといけないので、しがみつくにしても、色々と気を使わないといけなかった。
ちなみに大量の綻び石の方はドッペさんがアビちゃんの姿で、体の中に収納してくれた。なのだが、この卵の方はなぜかドッペさんの中に入らないようなのだ。バイクに乗る前に試したが、ドッペさんに拒否られてしまった。
なら、霊羅さんのバイクにしまえないかなと、期待したのだが、バイクはスタイリッシュな分、荷物を入れられるような所はないらしい。
その霊羅さんは、俺のあげた卵をバイクに乗る直前に、とてもとても大切そうに服の中にしまっていた。
その時に思わず、服の中にしまうところを目撃しかけてしまい、俺が急いで目をそらすという一幕があったが。
さすがに人けのない山の中とはいえ、屋外であれはダメだと思う。
まあ、霊羅さんのそんな所業も、もしかしたら俺が急いでいるのを知っていたから、という可能性もあり、俺は何も言えなかった。
そんなわけで、行きよりも少しだけ時間をかけて、ようやく俺は自宅のアパートの前まで帰ってきた。
そんなこんなで、霊羅さんのバイクの後部座席から降りるとき、少しフラついてしまう。
それでも俺はしっかり霊羅さんにお礼を伝える。すると、とても嬉しそうにまたいつでもバイクに乗せますよと言ってくれる霊羅さん。
引きつりそうになるのを全力で抑えた笑顔で霊羅さんに応えると、俺は自宅の中へと急ぐのだった。




