第81話 四なる至宝
ゲートが消えて現れた、大きめの箱。
開いた箱の中に、ちょこんと何かが転がっていた。
「――卵?」
それはスーパーでよく売っているようなニワトリの卵だった。
それも四個一パックの、透明なプラケースでセットになったもの。
俺はその卵のパックを箱から取り出す。
箱がいつものように消える。
「とても素敵な卵ですね。四つ、ですか」
「えっ……ああ、そうだね」
いつの間にか音もなく霊羅さんが立ち上がって、すぐ横から俺の手のなかの卵を、とても熱心に見ていた。
さすがに、びっくりした。
驚いて心臓がドキドキしている。距離も何だか近い。
当の霊羅さんは、さっきまで土下座じみた姿勢でいたことなんて、まるでなかったかのような振る舞いだ。そのせいで、俺はあれが何だったのか、霊羅さんに聞きそびれてしまう。
――まあいいか。それより、今はこの卵だ。
これまで、あのサイズの大きな箱からは基本的には眷属となったモンスターが出てきていたのだ。
とはいえ、今回はゲートになったものを綻びに戻しているので、イレギュラーだともいえる。
俺はまずはと、鑑定スキルを使用してみる。
『卵:卵
呼称:なし
称号:なし
スキル:愛情受理』
――やっぱり、卵だな。でも卵なのに、見たことないスキルがある……
愛情受理というよくわからないスキルがついていた。
そしてその詳細は、俺の、いけずな鑑定スキルさんでは見られなかった。
ただまあ、言葉の感じ的には愛を注ぐと、受け取ってくれるのだろう。たぶん。
その時だった。
手の中の卵を取り巻くように、赤い光が現れる。
それは、さっきゲートを閉じる前に見えたのと同じ光だった。
そして卵を取り巻くその赤い光の一筋が、俺の隣で静かに佇んでいる霊羅さんへと、なぜか繋がっていく。
――また、この光。しかも今度は霊羅さんと卵を繋いでるよ。こうなるとさすがに、放って置くわけにはいかないか。時間が惜しいけど、ちょっとだけ確認を……
俺は自身のレベルアップしたスキルのうち、覗き魔の眼球から鑑定してみる。
『スキル覗き魔の眼球レベル3の効果を提示。スキル鑑定を内包。スキル粗探しを内包。スキル蔑視耐性を内包。スキル邪眼耐性を内包。称号「強奪者」の効果によりスキル邪視を内包。保有者は深淵の支配者へと至る資格を持つ。筆頭眷属の存在を基点に、覗き穴を追加可能(1/1)。スキル理の目を内包』
レベルアップして、覗き穴がまた一つ追加できるようだ。
そして内包するスキルが、一つ増えていた。
――この理の目というのが、赤い光が見える原因っぽいな。
理の目スキルは、詳細が確認出来るか、ダメもとで試してみる。すると、今度は一応、反応する。
『スキル理の目の効果を提示。システムの理の一部が開示される』
――さすがの鑑定スキルさん。よくわからない解説、ありがとうございます。
期待を裏切らない鑑定結果に心の中でだけツッコむ。
すぐ隣に、卵と赤い光で繋がっている霊羅さんがいるのだ。口に出してそんなこと呟いていたら、絶対に、霊羅さんから変な人だと思われるだろう。それは結構、嫌だった。
――はぁ。結局、よくわからないか。でもたぶん、この卵は霊羅さんに渡しておく方が良いってことなんだよね?
俺は熱心に卵を見続けている霊羅さんの方へ、そっと卵を差し出すと、卵を受け取ってもらえるか確認するため、口を開くのだった。




