第78話 突然の変化
状況は一言で言って、カオス。
混沌を極めていた。
まるで土下座しているかのようにうずくまって、何かを呟き続けている霊羅さん。
とめどなく溢れてきては、ドッペさんにより一撃で倒されていくオーガナイトと、ゴブリンアサシンたち。
そして針山のような頭の、俺だ。
とりあえず見渡す限り、敵モンスターの死骸が壁のようになってきた。
しかしドッペさんのスライムオリジンの体を伸ばす攻撃は、そんな死骸の壁など全く問題ないようなのだ。
一部は死骸の壁のすき間を縫うように突き刺し。 また別の体を伸ばす攻撃は上空に一度上がり、突き下ろすように敵モンスターの脳天から下腹部までを貫通していた。
そんなわけで意外と余裕がある俺は、突然俺の前まできてうずくまっている霊羅さんと、なんとかコミュニケーションをとろうと試みる。
最初に何故か謝罪を口にされたあとは、よく聞きと取れないような小さな声でうわ言を呟いているかのようなのだ。
ただ、霊羅さんの口元に顔を近づけようと俺が屈むのは、どうも絶賛敵を殲滅中のドッペさんが嫌がるようなのだ。
屈もうとする度、軽く俺の頭部を締めるように力がかかるのだ。
もちろん、全然痛くはない。
ただ、なんとなくこの俺の動作は今忙しいドッペさんの邪魔になってしまうんだなとわかった。たぶん、視界が悪くなるとかそんな感じなのだろう。
俺も詳しくはないが、命の奪い合い中に敵への視野が狭くなるというのは確かに嫌かもしれない。
そこで一つ俺は提案してみる。
「ドッペさん。もしやりにくかったら、俺から離れてくれても……」
そこまで言ったところで、これまでで一番の頭部への締め。
ドッペさん的にはそれは絶対に嫌らしい。
まあ、確かにさっきも守ってくれたので、俺もドッペさんがいないと心もとない。
仕方ないので、そのまま俺は霊羅さんに呼びかけてみる。
「霊羅さんー。霊羅さーん! おーいっ」
だめだった。返事もなく、霊羅さんの姿勢に変化は見られない。
とはいえ肩をゆすったりなどするのは、さすがに俺も気が引ける。
「仕方ないな。こうなったら先にモンスターたちを……そうしたらドッペさんも俺が屈んだりしても大丈夫だろうし。それからゆっくり霊羅さんには何をしてるのか確認すればいいよね」
そうして俺は周囲をスキルで見回す。
するとすぐに見つかった。
ゲートになってしまった時空の綻びだ。
それも2つ。
そのうちの一つの方へと向くと目をこらす。
すると俺は不思議なことに気がつく。
俺のスキルを使っている左目に、見たことのないものが映ったのだ。
粗探しスキルで、見つける時空の綻びの赤い光と、それはよく似ていた。そう、穴の形に広がる赤い光のリングのようなものが見えたのだ。
そう、モンスターの現れるゲートというものが、まるで時空の綻びの赤い光が変化しただけに俺の目には映ったのだ。
「あれ? あのゲートって、なんだか時空の綻びに戻せそう……」
俺は思わずそう呟いていた。




