第77話 暴力と暴力
嬉々とした笑顔を浮かべた霊羅さんの、まさに猛攻と言うべき、激しく荒々しい攻め。
まるで、破壊そのものが顕現したかのようだ。
まさに人類が到達できる、暴力の限界点。
当然、次々にモンスターが倒されていく。
しかし、だ。そんな霊羅さんのその素晴らしい殲滅速度を、なんとモンスターの出現速度が上回ってくる。
現れるモンスターは主に二種類のようだ。
ひとつは鬼のような見た目の、オーガナイト。
そしてもう一種は、小鬼のようなゴブリンアサシン。
それらは俺から見てもアビちゃんやドッペさん、べべちゃんに遠く及ばない実力しか持たないのがわかる。
ただ唯一。脅威はその圧倒的なまでの数だった。
まるで、押し寄せる波のように、とめどなく、大量に現れてくるオーガナイトとゴブリンアサシンたち。それらが、俺たちがバイクでとまった山道の左右の林から湧き出てくるのだ。
「──うわっ」
その飽和攻撃の果てに、ついに、霊羅さんの殲滅を掻い潜ってきたオーガナイトの一体が俺の目の前にまで迫る。
その時だった。俺の頭部に、軽い衝撃。
といっても、攻撃を受けたわけではない。
俺が視線を上へ向けると、俺の頭を守るように覆ってくれていたドッペさんが、アビちゃんの姿で体の一部を伸ばしていた。
その細く伸びたスライムオリジンの体は、まるで透明な槍のようだ。
その鋭い先端が、俺から少し離れたところにいたオーガナイトの体を易々と貫通している。
「あっ、ありがとう。ドッペさん」
俺がお礼をいうと同時に、スルッと槍のように尖らせていた体をオーガナイトから引き抜くドッペさん。
どさりと重そうな音をたて、一瞬で絶命したらしいオーガナイトが大地へと崩れ落ちる。
「も、申し訳ありませんっ!」
「え、いや。そんな、霊羅さん、やめてください」
いつの間にか、モンスターを殲滅していた霊羅さんが、俺の方へと戻ってきていた。
その真下にある霊羅さんの後頭部に向かって俺が話しかけている間にも、俺の頭部には先ほどと同じ様に軽い衝撃が何度も走る。
細い槍のように変化させた体を、ドッペさんが何本も何本も、四方八方に伸ばしているのだ。
端から見たらきっと、俺はまるでハリネズミか巨大なウニが頭についているかのような見た目になっていることだろう。
ドッペさんのその攻撃は、あの圧倒的な暴力だと思われた霊羅さんの殲滅速度を、容易く上回ってくる。
敵のモンスターが現れる速度は変わらないままに、ドッペさんがあっという間に大量の敵を倒してくれているお陰で、そこには奇妙な均衡が生まれていた。




