第69話 久しぶりのスマホ
「審、判……?」
たぶん、べべちゃんの新しいスキルのことだろう。しかし、こうしてわざわざべべちゃんが俺の前にまできて、じっと待っているというのは、それだけで尋常じゃないなというのが伝わってくる。
これまで、アビちゃんたちがスキルを使うのに、いちいち許可を求めてきたことなどないのだから。
その俺の呟きに、鑑定スキルが素直に反応する。
あの、底意地の悪い鑑定スキルが、だ。
それだけで、俺の警戒心は一気に加速する。
なので、俺は慎重に慎重に、深淵を覗き込む左目に映った文字列を読みとこうと、構える。
『審判:七つの天使のラッパが鳴り響いたのち、発動可能。神の王国が完成する』
短い。さすが鑑定スキルさんだ。
しかし、短いながらに、とてつもなく危険そうなことが書かれている。
何度も何度も、俺はその文字列に目を通すが、内容は当然、変わらない。覚えてしまうぐらい読み返したところで、俺はゆっくりと視線をべべちゃんから外す。
すると、その後ろに佇むラッパを持ったブラウニーちゃんたちと目が合う。
優しげに微笑みながら、ラッパを口元に当てているブラウニーちゃんたちが、六人。
あと一人はラッパを下におろしている。
そのラッパを構えていないブラウニーちゃんは、たぶんさっき聖骸を授与したときに、音楽を鳴らしてくれていた子だろう。
「──これって、もしかして大災害が起きるやつじゃない?」
俺は慌てて深淵から目をそらすと、冷蔵庫のある壁を離れて窓へと向かう。
閉めっぱなしの少しカビたカーテン。
それを勢いよく開ける。
窓の外の景色は、景観が良いとは到底言えない雑然とした住宅街だ。崩れてしまっている建物も多い見知った街並み。
その建物がどれも、遠目に見て何か白い粒のようなもので覆われている。窓から近くを見ればそれが無数の氷の塊だとわかる。
「雹……え、雹?」
俺はそこで慌ててスマホを覗き込む。
深淵を覗き込ようになってからは、そちらばかりが楽しくて、スマホをつけるのすら久しぶりな気がする。
幸い、電池は数パーセントだが残っていて、無事にネットに繋がる。
「ああ……世界中で降ったんだ、この雹……」
ちょうどそこまで見たところで、スマホの電池が切れる。
俺はその場で座り込み、力が抜けてしまった手からはスマホが床へとこぼれ落ちたのだった。




