第68話 審判
俺が覗く深淵。
そこでは、べべちゃんと、ベヒーモスズへの聖骸たる飴ちゃんの授与が全て終わったところだった。
ベヒーモスズは、お口のなかでモゴモゴ、ペロペロと、聖骸を舐めている。美味しいのか、とても嬉しそうだ。
──そういえば、天使のラッパって、最初のブラウニーちゃんしか吹いてなかったよね。なんでだろ?
聖骸授与の間の音楽は、結局、一人目のブラウニーちゃんがすべて担当したようで、他の天使のラッパを持ったブラウニーちゃんたちは口元に当てているだけだったのだ。
もしかしたら他のブラウニーちゃんたちは、練習が間に合わなかったのかもしれない。
──俺が急に頼んだことだしなー。そうだったら申し訳ないこと、しちゃったかも
俺がそんな反省をしているときだった。
深淵で一番最初に聖骸を授与され、食べ終わった様子のべべちゃんに、変化が起き始める。
小さかったべべちゃんの体が、ゆっくりと成獣へと成長していく。それはまるで時が、早回しされているかのようだ。
そして、べべちゃんにおきた変化はそれだけではなかった。
二本あったべべちゃんの角が成長の過程で一本にまとまり、太く長く、捻れながら伸びる。それはまるで一角獣のように立派な、角だった。
そうして成長したべべちゃんを、俺は鑑定スキルで確認する。
『テイム済みモンスター:ジャッジメントベヒーモス(半神獣)
呼称:ベベちゃん
所属:スライムオリジンの眷属
スキル:突進、分裂、竜血、時跨ぎ(未開放)、審判
装備:深淵竜の血染めの鼻輪
'進化可能'』
「おお、べべちゃんがベビーじゃなくなった……ジャッジメントベヒーモス、か。聞いたことないモンスターだ。それに、半神獣」
べべちゃんの種族が変わっていた。ジャッジメントということはその名の通りなら、何かのジャッジをするベヒーモスなのだろう。
実際、スキルに審判というものが増えている。
そして半神獣の表記。
本当ならオリヒメを倒して空いた枠の神獣に、べべちゃんを進化させようかなと俺は思っていたのだ。
それが今回、授与された聖骸を食べたことによる変化で俺の思惑は、よい方向に外れてしまったといえる。
──べべちゃんを半神獣から更に神獣に進化は……それも出来るのか! でもせっかくの神獣枠が勿体ない気もするよなー。だとすると、神獣に進化させるのは、ドッペさんか、あのお姉さんブラウニーちゃんのどちらか、かな?
俺が鑑定スキルを切って悩んでいるときだった。
ジャッジメントベヒーモスとなったべべちゃんがゆっくりと俺の覗き込む覗き穴の方へとやってくる。
なぜかその後には、天使のラッパを持った七人のブラウニーちゃんたちが続く。
そして覗き穴の直前まできたところでお辞儀をするように頭を下げるべべちゃん。長く伸びた一本の角の先が地面ギリギリでとまる。それはまるで騎士が剣先を下げて礼をしているかのように見えた。
そのまま、何かを待つようにべべちゃんが伏せて頭を下げ続けている。
俺がもしかしてと鑑定スキルをべべちゃんへと向ける。
俺の予想は当たっていたようだ。表示される文字列に、変化がおきていた。
『ジャッジメントベヒーモスによる審判の発動待機中。発動を許可しますか』




