第67話 とある探索者たち3
「先輩先輩ー。姫君さん、格好良かったすねー?」
「──それは嫌みか、アイカ」
国防軍の所有するとある建物から出たところで、アイカは先輩にそう話しかける。
そのアイカに嫌そうな顔をして返事をする先輩。
「そんなこと、全然ないっすよー。召喚になかなか応じないところか、召喚状すら手にとってくれなかったり。そんな姫君さんを前にして、恥ずかしそうにもじもじしてるだけで口添えの一つしてくれなかった先輩に幻滅したりとか。全くないっすよー」
とうとうと流れるようにアイカの口から文句が溢れ出す。相当、うっ憤が溜まっていたようだ。
「──完全に、嫌みじゃないか」
「はぁ、全く、なんなんすかねー。最終的には預言者様のところに向かってくれたから良かったものの、危うくお使い程度の依頼で失敗するところだったんすよー。そうなったら先輩だって!」
「わかってる、わかってるから!」
詰めるように近づいてきたアイカの肩に手を置き、優しくさするように動かして、宥めすかす先輩。
それでようやくアイカの勢いが少しだけ衰える。
「もうっ──はぁ、まったく。それにしても、深淵同好会の姫君、深淵の雫に触れし祝福の魔女。さらには、新たにスタンピードを殲滅したことで、一騎当千とまで呼ばれ始めたあの人の、命よりも重要だといい放つ、大切な命題ってなんなんすかねー」
「……なんだろうな」
「先輩……、どうしたんすか」
じとっとした視線を先輩へと向けるアイカ。
「いや、だってさ!アイカも見ただろう!」
「何をですか?」
「あ、あんなに、その、色っぽくなってたんだぞ!」
「なってましたね。恋でもしてたんじゃないっすか──あ。先輩は姫君の命題なんて、その名ばかりの単なる恋患いだという推測なんすね。だとしたら、あのアマ、舐め腐ってません?」
一気に口の悪くなるアイカ。
それに気にした風もなく、先輩は呟く。
「恋、恋か……だとすると例の魔眼持ちの? ──いや。私は姫君の恋なら、応援する。そう、応援するさ」
「はあ、ダメだ、これは……」
その時だった。
ぽつりと一滴の滴がアイカの顔に天から落ちる。
「──雨?」
「いや、これは──雹だ。アイカ、建物に戻るぞ!」
慌てて今出てきたばかりの建物へと避難する二人。
この日、同時刻、世界中で同じ様に降雹が観測されたのだった。




