第66話 聖骸の授与を見学してみました
俺は慌てて覗き穴に顔を押し当てる。
俺が言伝てして、ブラウニーちゃんたちが準備してくれたことで、今回実現したべべちゃん達へのご褒美なのだ。
俺には、しっかりと見届ける義務があるだろう。
俺が覗き込む先では、聖骸を手にしたブラウニーちゃんたちが七人、ゆっくりと前に進むと、俺の覗き込む覗き穴の前で整列していく。
それは前に俺がお守りのスプーンを貰った時とよく似ていた。
そういえば、あのときの少し年長に見えたお姉さんブラウニーちゃんが今回も整列したブラウニーちゃんたちの中心にいる。
あの時は小学校高学年くらいの見た目だった。それなのに、今ではお姉さんブラウニーちゃんは、中学生くらいに見える。もう、あまり人と見分けがつかないぐらいだ。
あれからそんなに時間は経っていないはずなのに、不思議だった。
そんなことを考えている間に、お姉さんブラウニーちゃんが膝をつき、聖骸を捧げ持つ。
これと同じ流れを、俺はすでに一度見ていたので、どうすればいいのか、すぐにぴんとくる。
「──アビちゃん、お願い出来る?」
俺は覗き穴から少し離れて、隣のアビちゃんにそう伝える。
どうやら、それが正解だったようだ。
ふよんと一跳ねして、アビちゃんが覗き穴ベータへとスルリと潜り込んでいく。
再び俺が覗き込むと、アビちゃんがお姉さんブラウニーちゃんの前に佇み、その体の一部を伸ばしていく。
それは、俺がこのお守りスプーンを貰った時と本当によく似ていた。
しかし、今回は違う点もあった。
前回はここでブラウニーちゃんたちの拍手が起きたのだが、今回は拍手ではなかった。
聖骸をもつブラウニーちゃんたちの、さらに後ろに控えているブラウニーちゃんたちがなにかを取り出すと口許に当て始める。
聖骸を持つ子たちのそれぞれ後ろに一人ずついるので、こちらも七人のようだ。
──あれはラッパ? いや、もっとシンプルそうな見た目だけど……
俺の見守るなか、口許にとてもシンプルなラッパらしきものを当てる七人のブラウニーちゃんたち。
そのうちの一人。お姉さんブラウニーちゃんの後ろの子がラッパに息を吹き込む。するとそこから、なんとも言えない音色が流れ出す。
どうやって音階をつけているのか不思議だ。
操作出来そうな部分がなさそうなのに、しっかりとそれはメロディになっているのだ。
それも、どちらかと言えば神域の儀式にふさわしいような、厳かな音楽が奏でられていく。
──へぇっ! あれも、錬金術なのか。音楽を錬成しているとか、面白い。
俺が興味をひかれて鑑定スキルでみてみると、あれは天使のラッパという名称の、錬金術の器具のようだった。
可愛らしい名前はブラウニーちゃんたちにぴったりだ。
そして、ブラウニーちゃんたちの錬金術というのは、飴ちゃんだけでなくてああやって音楽も錬成できるらしい。
俺が感心していると、俺のいるアパートの外から、激しい雨音が聞こえ始める。
普段、深淵を覗いているときは気にならないのだが、今回は特に大きな音がするのだ。まるで雹でも降っているかのような感じの音だ。
とはいえ俺が今、飴ちゃんの授与式から目を離す訳には当然いかない。
その厳かな音楽を背景に、一つ目の聖骸がお姉さんブラウニーちゃんから、体を伸ばしたアビちゃんへ渡される。
天使のラッパの奏でる音楽がよりいっそう高らかに鳴り響くなか、アビちゃんよりべべちゃんへと、聖骸が授与されたのだった。




