第6話 会話を試みてみました
「あー、アビススライムさん? 君は俺のテイムモンスター、なのかな?」
自分でも変な質問だという自覚はある。
しかも、きく相手はモンスターだ。
それでも他にどうしていいかわからずにそう尋ねてみる。
すると、ほよんと一回、軽く跳ねるアビススライム。
俺は反応があったことに気を良くして再びアビススライムに質問する。
「ええっと、俺の質問に対して答えが、いいえの時の動きを見せてくれる?」
ふよんふよんと、二回跳ねるアビススライム。
「おおっ。すごい。賢い」
ふよんと跳ねるアビススライム。
どうやら、自画自賛も出来るスライムのようだ。
「──なんて呼んだらいいかな。アビススライムだから、アビさん? ──違うか。アビくん? ──え、アビちゃん、とか?」
その微妙に可愛らしい見た目に絆されるように、思わずそんなことを言ってしまう。
その俺の名付けに、立て続けに二回ずつ跳ねていたアビススライムが、最後だけ一回跳ねる。
どうやら名前はアビちゃんが良いらしい。
──女の子、なのか。いや、スライムに性別なんて、あるのか? いやいや、落ち着け、俺。そんなことよりも、こんなとこを他の人にみられたら大事になるよな……
誰かにアビちゃんをみられたら、面倒ごとになるだろうと、俺は今さらながらに気がつく。
どうもお腹が空きすぎていて、俺は判断が鈍くなっているのだろう。
ただ、幸いなことに今のところ人通りはない。
──ダンジョン災害の被害で、ここらはあまり人の住んでいない地域だからな。とはいえ、油断できないけど……
「……とりあえず、家に帰るか。ついてくる、よね?」
不思議と連れ帰ることに疑問を感じずに、俺がアビちゃんにそう尋ねると、ふよんと一回跳ねる返事がかえってくる。
それを確認して、食料の確保をいったん諦めると、俺はアビちゃんとともに自宅へと急ぐのだった。
◆◇
「……これは想像以上に狭いな」
俺一人で使っていてすら、まったく広くない自宅の部屋が、アビちゃんがいることで圧迫感を感じるぐらいに狭く感じる。
俺の言葉を理解している様子のアビちゃんは心なしか申し訳なさそうにしていた。
──そういや、部屋に誰かが来たことなんてないもんな
どうしたものかと考えながら、試しに聞いてみる。
「アビちゃんは、小さくなれたりする?」
ふよんふよんと二回跳ねるアビちゃん。
しかしすぐに部屋のすみ、冷蔵庫の近くにアビちゃんは移動すると、部屋の角にその身を押しつけるようにして縦に細長くなっていく。
「おお、すごい! ここまで自由自在に体の形を変えられるんだ」
すぐにアビちゃんの体の一部が、天井まで届く。
その事によって、アビちゃんの存在による部屋の圧迫感はかなり軽減されていた。そして俺の気のせいかもしれないが、誉められたアビちゃんはどこか誇らしげだった。




