第58話 更なる一体を目撃しました
スライムオリジンとなったアビちゃんと対峙するもう一体の神獣たる、敵。
それを俺の鑑定スキルを内包した覗き魔の眼球が捉える。
『モンスター:□□□□□□□□□
呼称:オリヒメ
所属:深淵の真なる暗黒の下僕の一。十三神獣、十席
スキル:立方起動、堅固堅牢、投網魔法、邪視耐性、□□□、□□□、□□□□、□□□□、□□□□、……、
邪視耐性スキルにより邪視魅了をレジスト中』
「愛称が、オリ、ヒメ……あんな見た目、気持ち悪い蜘蛛系モンスターの愛称が、オリヒメ!?」
俺は思わず二度、くちばしってしまう。
オリヒメは、さすがに無い。俺だって、そんなに自分のセンスに自信があるわけではない。それでも、「真なる暗黒」と、オリヒメだ。
名付けた存在が、分かり合うのは無理そうなネームセンスをしているのだけは、間違いない。
「スキルは──ああそうか、レッサーアビススパイダーと同じものだけ、見えてる感じか……」
種族や、肝心のオリヒメ固有のスキルは覗くことが出来ないようだ。俺がそうしている間に、アビちゃんと敵たるオリヒメの間で、争いが始まる。
それは、かなり異様な戦いだった。
自身の可変する質量そのものを武器とするアビちゃん。それに対して、オリヒメははっきりと認識出来ないが、たぶん多彩な攻撃を繰り広げているようだった。
あの数えきれないほどあるオリヒメの脚の、一つ一つがどうやら固有のスキルを内包し、それらを同時多発的に運用しているっぽい。
全くタイプの違う、二体の神獣。だが、結果として戦いは拮抗し、膠着していた。
アビちゃんが急加速からの、自身の超巨大質量を解放した突進を、オリヒメは謎のスキルでギリギリいなしている。とはいえ、そのいなすのに使用しているオリヒメの二本の脚がミシミシと悲鳴をあげてはいる。
逆に、オリヒメのスキルを込めた攻撃は純粋な大量の質量を保有するアビちゃんの体の表面を削る。とはいえ、削るだけだ。
互いに、高い実力を誇るがゆえの、決定打に欠ける戦いが、俺の目の前で繰り広げられていく。
俺は一度視線をそらし、他の眷属達が無事かを確認する。
すると、べべちゃんとベヒーモスズは、ゆっくりと後退しているところだった。
倒したエルダーフェンリルの死骸を、べべちゃん指揮のもとにベヒーモスズが引きずって運んでいる。
どうしても持ち帰ろうという、強い意思をその動きから感じる。
──あそこまでエルダーフェンリルの死骸に執着するってことは、相応の理由が何かあるんだろうけど……あれ?
ドッペさんの、姿が見えない。
その時だった。
俺の視界を塞ぐぐらい近くに、アビススライムの時の、アビちゃんの姿をしたドッペさんが現れる。
──近い!? て、そうか。俺と近くないとドッペさんは変化しないからっ!
俺がそう、理解したのとほぼ同じタイミング。ドッペさんの姿が急速に小さくなっていく。
そう、神獣たるスライムオリジンのアビちゃんと、同じ姿へと変化したのだ。
そのまま、前後から挟み撃ちにするように、ドッペさんとアビちゃん、二体の神獣たるスライムオリジン達が、オリヒメへと襲いかかったのだった。




