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覗き穴ダンジョン~自宅警備員の俺の部屋の壁にダンジョンの深淵を覗ける穴が空いた件  作者: 御手々ぽんた


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第57話 スライムオリジンの姿を目撃しました

 ぷるぷると、激しく震えだすアビちゃん。


 その元から決して小さくなかった体が、膨らみ始める。さらに巨大になろうとしているのだ。


 まるで自分の体にこれから何が起きるのか、アビちゃん自身も把握しているみたいだった。

 というのも、俺の眷属たちで固まっていたところから前へと、アビちゃんが勢いよく飛び出していく。


 その間も、体の膨張が止まらない。


 どんどん、どんどんと膨らみ続けるアビちゃん。

 そしてアビちゃんは高速移動スキルを使ったのだろう。


 巨大化し続ける体が、急加速する。他の眷属たちを、自身の膨張に巻き込まないようにしたのだ。


 結果として、急加速したアビちゃんのその先にいたのは、巨大な蜘蛛──レッサーアビススパイダー達だった。


 その巨大な蜘蛛達よりも、すでにアビちゃんの体は大きくなっていた。

 それが、超高速でレッサーアビススパイダーたちの集団へと突っ込む。


 結果は、凄惨の一言だった。


 アビちゃんの突進に巻き込まれる先から、レッサーアビススパイダーたちの体は、なすすべもなく引きちぎられ、すり潰され、バラバラになって、果ては圧縮されていく。


 膨張し続けるアビちゃんが通りすぎたあとに残るのは、レッサーアビススパイダーだったものの成れの果て──残骸だけとなる。


 そこで、不思議なことにアビちゃんの体の膨張が止まったようだ。

 今度は逆に、その体が小さくなっていく。


 ビックバンで膨らみ始めた宇宙が、遥かなる時を経て、再収縮するかのように。


 巨大になりきった体積が、小さくコンパクトに圧縮されて、超、高密度になりながら、元のアビちゃんのサイズへと至る。

 そしてさらには、一般的なスライム程度にまで、小型化していく。しかしそれは、その変化は、決して弱体化などではなかった。


 あれほどの偉容を誇った質量はそのままに、コンパクトになったのだ。

 一瞬、アビちゃんの周囲の空間がまるでブラックホールでも現れたかのように歪んだように見えたから、間違いない。しかし、その空間の歪みも、今は消えてしまっていた。


 アビちゃんの意思で、質量を消したのはなんとなくわかる。ただ、その原理は完全に謎だ。


 亜空間的な時空へ巨大な質量の一部を押し込めたのか。

 はたまた、未知の事象によるものなのか。


 ただ、アビちゃんが、自分の意思で自由自在に自身の質量を操れるのだけは伝わってくる。


 そうしてついには、俺が両手で抱えられるぐらいのサイズまで小さく変化したアビちゃん。

 そこで、アビちゃんの体の変化が止まる。


 急加速していた体もとまって、アビちゃんは悠然と佇んでいる。


 その場を眺める俺の左目に、文字列が映る。


『神獣』


 アビちゃんの体に重なるようにして、表示されている。


 その文字は、二つ。


 一つは、スライムオリジンとなったアビちゃん。


 そしていま一つは、アビちゃんの前にいる存在。

 取り巻きのレッサーアビススパイダーほぼ全てを、無惨に殺され、姿が見えるようになったもの。


 多脚に、無数の複眼をもつ、神獣たる蜘蛛の姿があった。



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