第42話 side とある探索者たちの電子のやりとり2
──先輩ー、そっちのスタンピードの後片付けはどうっすかー。終わってたら焼き肉、奢ってくださいよー
──おい、さすがにいきなりだなっ。たかりすぎだろ、アイカ
──えー。僕と先輩の仲じゃないですかー
──まあ、焼き肉ぐらいなら。と言いたいところだが、すまん。まだ片付きそうにない
──えーそんなー。抜け出しちゃいましょうよー
──そういう訳にはいかんだろ
──もー。先輩、真面目なんだから。あっ!
──なんだ?
──僕、わかっちゃいましたー。愛し愛しの深淵同好会の姫君が、倒し散らかしたのを、一つ、また一つと片付けてて。先輩、ついにあっちの方に目覚めちゃったんですね!
──なんのことか、わからん
──え、嘘。本当にそうなんですか……
──いや、違うぞ。違うからな!
──うわー。そこまで拗らせてしまいましたか、先輩。御愁傷様です。ま、いいや。そういや、スタンピードのすぐあとに大規模な停電ありましたよね?
──いいのかよ。……まあ、いいんだが。で、停電がどうした? スタンピードの被害の一つだろ?
──でもあれって、タイミングおかしくなかったすか?
──そうか?
──そうっす。そもそも、スタンピードでは電気設備にまで物理的な被害はなかったんすよ。停電のタイミングも、スタンピードが終息したあとですしー。で、噂になってるんすよ
──なんの噂だ?
──ヒトクちゃんっす。大規模に稼働して、電力不足になったんじゃないかって
──おいっ
──大丈夫っすよ。とりあえず、噂をしてる探索者はみんな、まだ生きてるっす。
──だからと言って、安全とは限らんだろ
──大丈夫ですって。だいたい、スタンピードが起きること自体、おかしいじゃないですか。異変ですよ、異変。
──それは、確かにそうだが
──この異変も、ダンジョンの深淵に、ついに「あれ」が生まれからなんじゃないかって。そしてそれを誰かがヒトクちゃんで隠そうとしてるんじゃないかって
──あれって──もしかして、魔王、か?
──先輩もやっぱりそう思いますよね!
──いやいや、単なる憶測だろ、アイカ。噂するのも、もう、やめとけ。
──だってー。もう疲れったすよー。焼き肉を、奢りで食べれないなら、噂でもして、憂さ晴らししないと。やってけないんすよー。あっ、そういや、もう1つあるんすよ、噂ー
──いやもう、まったく聞きたくないんだが
──またまたー。先輩も好きなくせにー。で、今回のスタンピード、やけに規模が小さくなかったっすか? どうも、メインゲートがなかったらしいんですよねー
──その先は、本当に聞きたくない
──先輩の愛しの姫君が一人で殲滅させたのはスタンピードのサブゲートだけ。で、大量のモブモンスターとスタンピードの主が出てくるメインゲートは、まだこれからなんじゃないかって。噂になってるんすよ? 国防軍も戦時体制を維持してるとか
──おい
──つまり、後片付けで駆り出されてる僕たちって、ていのいいカナリアなんすよー。メインゲートの出現に遭遇したら、危険を知らせるようにピーピー鳴きながら死んでいくんすよー。で、先輩、焼き肉どうっすかー?
──ああ、そうだな。はぁ。行くか
──わーい! さすが先輩っ。話がわかるっすねー。じゃあ、待ち合わせは──
そこで二人のやりとりは途切れるのだった。




