第33話 貰い物を使ってみました
ブラウニーちゃんたちから、謎の棒を貰ってから数日後、俺の食事の風景は劇的に変化していた。
「いただきます」
俺は例の謎の棒を片手に、昼食をとる。
そう、俺はあの貰った謎の棒が、スプーンなのだと無事に、解明していたのだ。
──もらったはいいけど、どうやって使うか結構、悩んだんだよね。でも、試してみたらこれが意外と手に馴染んで使いやすいんだよなー
もちろん、スプーンとして使う前には、ちゃんと入念に洗ってある。
そしてそのスプーンで食べているこの食事もなんと、ブラウニーちゃんたちが調理してくれて、アビちゃんが容器に入れて運んで来てくれた物だった。
ブラウニーちゃん達は工作だけではなく、料理も上手みたいなのだ。
それといつの間にか、色とりどりに変化していたベヒーモスズが積極的にブラウニーちゃん達の調理をお手伝いしてくれるようになっていた。
深淵を覗くと時たま、尻尾が水色のベヒーモスが、ブラウニーちゃんの持つ白い容器に水をどこからか出してあげているのだ。
また、別の時に俺が深淵を覗いたら、緑色の足先のベヒーモスが竜巻のような風で食材らしき物をまるでミキサーのように混ぜている姿を目撃したこともあった。
そんな感じで、ブラウニーちゃん達とベヒーモスズが協力して食事を作ってくれるのが、深淵の日常風景になっていた。
そして今日の昼食は、オムライスだ。
スプーンをオムライスに差し込むと、プチッと気持ちよく卵焼きの部分がちぎれ、ホロホロとライスの所が崩れながら綺麗にスプーンへと乗る。
これも不思議だった。
特にスプーンとして使いやすい形状になっているようにはいっけん見えない。それなのに、まるで食材がスプーンの言うことをきいたかのように、自然とこうなるのだ。
──そんなこと、あるわけ無いのにね。なんにしても、もう、この見た目だけで美味しそう。
ちなみに、お米だけは俺が無人コンビニで大奮発して買った古々米をアビちゃんに深淵に持ち込んでもらっている。しかし、他は皆が深淵で現地調達してくれた食材だ。
そう、つまり美味しいだけではなくて、今の俺は格安で食事が食べれていた。
粗探しスキルで、綻びから現金を獲得するのを自粛中の俺には、これはとても助かっている。
──あの探索者っぽかった二人連れの女性たち。たしか先輩とアイカって互いに呼んでたっけ。あの人たちは、まだここら辺をうろついてるのかなー。
そんなことを考えながら、美しくオムライスが乗ったスプーンを、俺は口へ運ぶ。
オムライスが、口のなかを幸せで満たす。特に、ライスに入っているお肉の美味しさは、桁違いだった。味だけではなく、一口噛むごとに体に、まるで力が滾るようにすら感じられる。
──ダンジョン産のお肉って超絶高級食材のはず……まさか庶民のなかでも底辺な俺が、本来なら特権階級の人間しか食べれないような贅沢な食事を、こうも毎日食べれるようになるなんてな……
そうして、体に溢れんばかりの活力が満ちてきたからか、それだけでモヤモヤと悩んでいるのがバカらしくなってきてしまう。
それぐらい、ブラウニーちゃん達の料理は美味しい。
──そうだよな。悩んでいても仕方ないし。とりあえず、少し家から離れた所に行ってみようか。
パクパクとオムライスが、どんどん口に消えていく。形はそれほどスプーンっぽくスプーンなのに、本当にとても使いやすくて、食べる速度がお陰でどんどんと早くなる。
そうして立て続けに押し寄せる美味しさと幸せのハーモニーが、俺を元気にし思考を前向きにさせていく。
──別に粗探しスキルで綻びを見つけたからって、無理して報酬ボックスを手に入れなくても良いんだよな。まずは時空の綻びが、うちの近所以外にもあるのか、確認するだけ、とかも意味あるしね
そうして超絶美味のオムライスを食べ終わる頃には、俺はすっかり今後の予定を決めていたのだった。




