第32話 sideブラウニー工房2
──あるじが受け取ってくれたー
──あるじが受け取ってくれたー!
──わたちたちの渾身の作品
──深淵竜の喉骨の王笏!
──持つものに支配を約束する、よ!
──邪視による魅了強化、もついてるよー
──カリスマ獲得、もついてるー
──気に入ってくれるかなー
──使ってくれるかなー
楽しそうに嬉しそうに、ブラウニーちゃんたちの間で、意識の相互交換が交わされていく。
悦びの感情が個々のブラウニーちゃんたちの間で激しく何度も何度も出入りを繰り返し、それはやがて大きな悦びの感情となってブラウニーちゃんたちの全体存在を包み込んでいく。
そんなブラウニーちゃんたちにとっては、創造神に等しい存在への献身に伴う、法悦とも呼べるよろこびのさなか、アビちゃんが深淵へと戻ってくる。
──アビちゃん様が戻ってきたー
──じゃあ次は、モーモーさんたち
──モーモーさんたちに鼻輪を渡すー
──渡すー
法悦にうち震え、ひとかたまりになっていたブラウニーちゃんたちから、七人が離れる。
その手には色とりどりの鼻輪。
虹の七色。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫に染められた鼻輪を一人一つ、捧げるように持っている。
──赤はベベちゃん様にー
──深淵竜の血で染めたー
──真っ赤な真っ赤な鼻輪ー
──かつての色ー
──これからの色ー
かつてクリムゾンベヒーモスであったベベちゃんのために、深紅に染められた鼻輪。
それを一人のブラウニーちゃんが捧げ持つようにして、ベベちゃんへと届ける。
すると次の瞬間、まるでもともとそこにあったかのように、鼻輪がベベちゃんの鼻へと装着されていた。
鼻輪がサイズを変化させ、ベベちゃんの鼻にぴったりの大きさになっていた。
──似合ってる!
──似合ってる!
──ベベちゃん様、とっても似合ってる!
──竜血の力を使ってねー!
──「かつて」と「これから」──時跨ぎの力もー!
鼻輪を装着したベベちゃんも、とても嬉しそうだ。
ベーベーと喜びと誇らしさを鳴いて感謝をブラウニーちゃんたちに示している。
その鳴き声が合図だったかのように。
その他の六色にそれぞれ染められた鼻輪を持つブラウニーちゃんたちも動き出す。
向かうのはもちろん、ベヒーモスズの六体の元。
一人が一つ、鼻輪をベヒーモスズの一体ずつに捧げていく。
次々に鼻輪が装着されていくベヒーモスズ。
すると、ベベちゃんとはまた違ったことが起きる。
鼻輪のサイズに合わせるように、ベヒーモスズの体の大きさが少しずつ縮んでいくのだ。
そして、それだけではなかった。
ベヒーモスズの体色も一部、変化を始める。
鼻輪の色と合わせるように、ベヒーモスズの体の一部がそれぞれの鼻輪の色へと変化していく。
あるベヒーモスは体に一筋。
またあるベヒーモスは尻尾が完全に。
またあるベヒーモスは足先だけ。
彩り豊かに、ベヒーモスたちの体色が変化していく。
そうして色の変化が完了した時だった。ベヒーモスズは、新たなる力を得る。
黄色く染まったたてがみを持つベヒーモスは、その体に雷光が走る。頭を一振りする度、激しい稲光が辺りを照らし始める。
青色の尻尾を得たベヒーモスは水を鞭のように扱い出す。それも一本や二本ではなかった。複数の水の鞭が、縦横無尽に空間を走る。
緑色の足先に変わったベヒーモスはその脚の回りに風が渦巻いていた。四本の脚に竜巻のような風をまとわせて、体がふわりと宙に浮き上がる。
それぞれの、新たなる力を得たベヒーモスズとベベちゃん。
それを称えるようにブラウニーちゃん達からは拍手が巻き起こり、その全てを見届けたアビちゃんは、満足そうにふよんと一度、跳ねたのだった。




