第30話 sideブラウニー工房1
──素敵な素材ー!
──素敵な素材ー!
──なに作るー?
──なに作ろうー?
──何でも作れるー!
深淵竜の亡骸に群がるブラウニーちゃんたち。
彼女たちは言葉を発することなく、一心に作業に取り組んでいるように、端からは見える。
しかしその実、彼女たちブラウニーは個々の自我は確立させつつも、同じ工房に所属する者たちは意識を共有させる術を持っていた。
そう、ブラウニーちゃんたちはどちらかと言えば人よりも、群体生命体に近しい存在だった。
そんな生まれたてのブラウニーちゃんたちの集合意識上にあるのは、目の前の素晴らしい素材のこと。
その素晴らしい素材で何を作るかということ。
そして自らの創造主への敬愛と忠誠ぐらいだった。
──創造主さまは、ここにはいないー
──創造主さまは、わたちたちを見守ってくれてるー
──創造主さまは、わたちたちのあるじー
──あるじー
──あるじーは人種ー
──あるじーは手があるー
──なに作ろうー
──剣は?
──防具は?
──あるじーに戦わせるとか、ないわー
──なら、王笏がいいー
──王笏!
──王笏! いいー
──偉大なあるじにぴったりー
──孤高のあるじにぴったりー
──新たなる深淵の支配者にぴったりー
──あるじーに王笏をささげるー
──わたちたち、つくるー!
──わたちたち、つくるー!
初めて創るものを定めたブラウニーちゃんたち。
大人の男でも一人では到底持てないサイズの、深淵竜の切り落とされた頭部へとわらわらと群がる。そのまま、その下に何人ものブラウニーちゃんたちが潜り込み、一気に持ち上げる。
喜色満面のブラウニーちゃんたち。素材を運搬することすら、既に嬉しそうだ。
そのまま深淵竜の頭部が、ブラウニー工房の中へと運び込まれていく。
ただ、工房からあふれでたブラウニーちゃんたちの全員が、深淵竜の頭部と共に工房へと戻った訳ではなかった。
その場に残って、切り分けられた首のない深淵竜の死骸を眺めるブラウニーちゃんたちが、七人。
あるものは腕を組み。
あるものは工具を掲げ。
深淵竜の亡骸を前にして、立ち並ぶ。
その七人は七人で楽しそうに意志疎通を始める。
──残った素材でなにつくるー?
──残った素材でなにつくろー
──牛さんたちへのプレゼント?
──モーモー牛さん、頑張ったー
──深淵竜の討伐のお祝いお祝いー
──何がいいかな何がいいかな
──骨を使った鼻輪はー、鼻輪はー?
──鼻輪なら、あばら骨からつくろー
──いいねいいね、せっかくだから色とりどりにしよう──
──しようしようー、虹の七色にしよー
どうやら七人のなかでの意思決定が終わったブラウニーちゃんたち。不思議なことに、この時、七人だけ工房全体の共有意思から外れてしまっていた。
そんな七人のブラウニーちゃんたちは、手に手に刃物を構える。そして深淵竜のあばら骨を取り出そうと、深淵竜の胴体部にとりつき、鱗と奮闘を始めたのだった。




