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覗き穴ダンジョン~自宅警備員の俺の部屋の壁にダンジョンの深淵を覗ける穴が空いた件  作者: 御手々ぽんた


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第3話 称号をもらいました

「──称号?」


 その独り言を呟いたからか、はたまた、俺が左目にだけうつる文字を読んだからなのか、次の瞬間、謎の文字が書き換わる。


『獲得称号「深淵を覗きし者」。人類種での該当称号の初獲得に伴い、称号獲得者へスキルの付与が実行済み。スキル覗き魔の眼球(デバガメゴヨウタツ)


「──え……はぁっ? 覗き魔の眼球(デバガメゴヨウタツ)って、なんだよ! 」


 色々とツッコミどころしかない文字に、思わず強めの声が漏れる。こんな声を出したのは、久しぶりだ。


 ──称号はまだいい。どうやら俺が覗きこんだ穴の先──ドラゴンがいた場所が、深淵と呼ばれるところなのだとわかるし。


 問題は、スキルの名称だ。


 ──人を明らかに覗き魔呼ばわりしているだろ、これ!


 たしかに好奇心に突き動かされるままに俺が穴を覗きこんだのは、間違いない。


 しかし、それだけで覗き魔よばわりされるのは、あまりにも、心外でしかなかった。


 しかもその酷いスキル名に上乗せして悪意を感じるのが、そのスキルにふられたルビだ。

 決して俺は出歯亀でもないし、覗きをするようなスキルを御用達だなんて、全くこれっぽっちも思っていない。


 しかし、そんな俺の内心とは関係なく、左目に映る文字がまた換わる。

 それで、どうやら俺の独り言に反応して文字が書き換わっている可能性が高いことだけは、これでわかった。


『スキル覗き魔の眼球(デバガメゴヨウタツ)の効果を提示。スキル鑑定を内包。スキル粗探しを内包。スキル蔑視耐性を内包。スキル邪眼耐性を内包。保有者は深淵の支配者へと至る資格を持つ』


「はぁぁっ!? ……ふーっ。はー。ふー……えっと、深淵の支配者、とは」


 俺は意識して深呼吸をし、無理やり落ち着きを取り戻す。

 なんとも、意味深な情報が多すぎだった。


 それでとりあえずはと、試しに一番最後に表示された名称を俺は声に出してみる。


 反応しない。


「あれ、これじゃダメなのか? うーん。邪眼耐性とは?」


 一応、再度試す。今度はスキルの名称だ。


 すると、今度は俺の問いに答えるように文字が再び書き換わる。謎の文字が声に反応しているのではという俺の予想は、おおむねは正解らしい。


『邪眼耐性の効果を提示。各種邪眼スキルによるデバフ効果の軽減する耐性。及び深淵の侵食を軽減する耐性』


 書き換わった文字。次にその内容を、俺は胡散臭そうに眺める。

 たぶんだが、この一連の謎の文字は内包されているという鑑定スキルの効果なのではないかと、推測できる。


 鑑定スキル自体はダンジョン関連のニュースなどで見聞きしたことがある。

 たしか希少なスキルだったはずだ。


 とはいえ、現代のダンジョンはその利権を握る国防軍か、一部の許諾を得た探索者と呼ばれるエリート層たちしか潜ることは出来ないのだ。


 ダンジョンに関する情報が秘匿されていたとしても一般人としても底辺よりの俺にはわかりようがない。


 スキルなるものがあるのは俺でも知っていたが、その獲得方法は少なくとも大っぴらには公開されてなかった気がする。

 なんとなく、ダンジョンで活動していると手にはいる、ぐらいの印象だった。


「まあ、いまはそれはいいか。えっと、とりあえずまとめると、あの穴の向こうはダンジョンで、しかも深淵と呼ばれる場所。それを覗きこんだら、スキルを得たと。それも、明らかに悪意のある名前をつけて……」


 独り言を呟きながら思い出しただけでムカムカしてくる。


「あ、そうだ。写真、とっとくか」


 そこでふと思い付いた俺は、スマホをカメラモードにして壁の穴に近づける。

 スマホのレンズを穴に触れるほどに近づけていく。


「……あれ、映らない。おかしいな?」


 画面は真っ黒だ。試しにスマホを壁から離せば、ちゃんと壁の映像が映る。


「小さすぎて撮れないのかな。残念──にしても、腹へったな……」


 そこで、そもそもが空腹だったことを思い出す。

 そして気がつけば、俺は外出用に着替えていた。


 さっきまでのやる気無さが、自分でも嘘のように自然に体が動いていた。


 家の玄関のドアノブに手をかけたところで、自身のその異変に、ようやく気がつく。

 しかし、深く悩むことなく、俺は夜の外へと歩き出したのたった。

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