第24話 ちょっとやりすぎてみました
「これは増えすぎた……かも……」
広かったはずの、深淵を覗く穴の先の広場っぽい空間。
そこは今、ちょっと手狭に感じるほどに、とあるものがひしめいていた。
「まさか、分裂すると、ベヒーモスになるなんて……」
アビスベビーベヒーモスたるベベちゃんのスキル、分裂。
そのスキルは、俺の深淵の祝福の余剰分ポイントでも、アビちゃんが運んでくれた深淵の果実をベベちゃんが食べても、どちらでも実行可能だった。
ちなみに、俺の深淵の祝福は、今こんな感じになった。
『深淵の祝福レベル1 0/20』
そう、余剰の四ポイント分、全て使用し零になっている。
そして、深淵の果実も二個とも、ベベちゃんにあげたのだ。
つまり、ベベちゃんは六回、分裂をしたことになる。
それだけ分裂を繰り返したのだが、ベベちゃん自体はアビスベビーベヒーモスのままだ。
ただ、分裂で新たに現れたのが、単なるベヒーモスなのだった。
どうやら、そういう仕様らしい。
──たぶん、アビスベビーベヒーモスより、単なるベヒーモスは格下なんだろうなー。
俺は現実逃避気味にそんなことを考える。
なにせ、ベヒーモスが、六体。
そしてさらに不思議なことに、アビスベビーベヒーモスは当然のこと、クリムゾンベヒーモスよりも、ベヒーモスは体が大きかったみたいなのだ。それも、かなり。
少なく見積もってもベヒーモス一体で、小型トラックほどの大きさがある。
それが、六体。
広場はまるで人気のサービスエリアの駐車場のような混雑さだった。
なんでこんなになるまで分裂させたかと言えば、簡単な理由だ。
分裂するとベベちゃんが嬉しそうにべーべーと鳴くのだ。それは、本当に微笑ましい光景だった。
で、その六体のベヒーモスたち──長いのでベヒーモスズと俺はひとまとめに呼んでいるのだが、彼らを悪意なき借用スキルでベベちゃんの眷属にしてある。
これにももちろん、理由があった。
俺の支配領域はベヒーモスズにも居心地が良さそうに見えるのか、その巨体で互いを押し退けるようにして、支配領域へと入ろうとするのだ。
これがベベちゃんぐらい小さいと可愛いのだけれど、小型トラック大の生き物がするのは甚だ騒がしく、迷惑極まりない。
そんなわけで、分裂元のベベちゃんに統制を取ってもらっているという訳だった。
赤ちゃん子牛にしか見えないサイズのベベちゃんが、小型トラック大のモンスター六体に指示する姿は、自分でそう仕向けておいても、なんだが不思議な光景だった。
「あー、アビちゃん、色々とありがとうね。あのさ、さすがにあれは少し手狭そうだし、ベヒーモスズにお散歩にでも行ってもらうように、ベベちゃんに伝えてもらえる? 俺はその間に綻び石を探してみるから。今度は、支配領域を拡大出来るようにさ」
俺はこっちに戻ってきてもらったアビちゃんに伝言をお願いすると、今後の予定を軽く伝える。
敏いアビちゃんは了解とばかりに軽く一跳ねして応えてくれる。
さすがアビちゃん。とても頼もしい。
こうして俺は再び綻び石を獲得するため、時空の綻びを探しに外出する準備を始めるのだった。




