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47 細川興秋

細川興秋

細川忠興の次男。徳川家への人質として江戸へ向かう途中で出奔。

長男忠隆が嫡男だったが廃嫡された折、次男興秋が継ぐ筈が三男の忠利が家督を継いだ事に反発し、大坂に入城したとも云われている。

「興秋殿、少々お願いが。」


籠城戦の最中(さなか)、ひょっこり細川興秋の私室を訪れた真田幸村。

不意の来訪に驚く細川興秋だが、とにかく幸村を招き入れる。


(細川興秋………本来は細川家を継ぐべき立ち位置だったが、何故か江戸で人質に預けられていた弟の忠利が当主を継いだのだったな。俺(幸村)が大坂に人質で豊臣と縁が出来たように、恐らくは弟の忠利も徳川と縁が出来ているのだろう。徳川に付くと決めた細川忠興がそこを踏まえて興秋を当主にしなかったのだろうが、興秋は面白くない。そこで江戸への人質交代を受け入れず出奔。まあ、ここまでは普通にありえるが、そこで敗色濃厚だった大坂に入り親父への当てこすりまで振り切ってしまう……よく言えば一本気で損得よりも筋を通す…悪く言えば、執念深く粘着質…ここらが人と成りであろうか…)


「此度は興秋殿でのうては叶わぬ働きをお願いいたしたく罷り越しました。」

「ほほう、それは興味深い、して何を致せば宜しいので?」

「今、池田勢を中心とした軍が大坂城北面に展開しており、恐らくは此の後、北東にある今福砦を落しに来るでしょう。」

「うむ。冬の陣でも似たような行動を幕府はしておりましたな。」

「はい。そこで興秋殿には一軍を率いて今福砦で奮戦して頂き、『細川興秋』ここに在り………と天下に名を轟かせてほしいのです。いや、実際に奮戦する必要は御座いません。ほんの槍合わせ程度で撤退して頂いて良いのですが、それを針小棒大に広めてほしいのです。勿論、噂などは伊賀者にもばらまいてもらいます。」

「自分の存在を世間に広めろ………と………く、くくく。幸村殿はよう判っておられる。なるほど、大阪城に儂(細川興秋)が居て徹底的に大坂方として奮戦しているのが日ノ本に知れ渡れば、江戸に尻尾を振る細川家は困りましょうな。大坂で奮戦するは元より決めていた事で御座れば、形だけなどではなく、本気で一当て致しますぞ。」

「流石興秋殿。されど、深入りはせぬようにお願い致す。興秋殿ご健在であればこその策でございますれば。」

「ご心配めさるな。我とて引き際は心得て御座る。そうさな、撤退の折りは舟を用意しておけば宜しかろう。淀川を下れば池田の者は追いついて来れますまい。」

「おお、それは良い思案。舟は木村重成殿が命を受け、淀川一帯の船をかき集めて御座いますので、数艘もらい受けてくだされ。」

「ほう、すでに何かの策が進んでいたのですな。では後日舟を今福砦に回航しておきます………しかし、我(細川興秋)の存在が目を引いたとしても、それだけでは嫌がらせでしか無いが、何か別の意味が有るのでしょうや?」


暫し瞑目する幸村。しかし、協力を仰ぐ以上、包み隠さず打ち明けるほうが良いと決めて話し始める。


「………されば、徳川家への立場が揺らいだ細川家はどこかの戦場を買って出て手詰めの戦を仕掛けてくる事になりましょう。」

「うむ。弟はのらりくらりして居るが、親父は激しやすい性。儂(興秋)の当てこすりに黙ってはおれませんでしょうな。」

「ええ。まさに全力で打ちかかってきます。そして物資を使い潰す。銃弾火薬は元より、食料も。」


この時代、実戦を行う兵士は普段の倍は食料を消費したと云う。またそれだけの食料を貰える事が軍の士気を支えていた一面もあった。


「………なるほど、そうなれば細川の軍勢もいやでも一度国元に退くことになる。」

「はい。」

「だが、細川の領する豊前・豊後は比較的大陸にも近く、長崎の商人の出入りも頻繁なので、短期間で物資を再調達して再び来寇してきますぞ、それこそ意地を掛けて、なにがなんでも。」

「一旦国元に追い返せば、そこで拙者(幸村)が仕掛けますれば。」


じっと幸村を見る興秋。だがこれ以上は幸村も話す事はない様子で黙っている。


「国元で霜に掛ける?(暗殺)」

「まともに暗殺は出来ますまい。」

「………まともでない方法………詭道が用意してある…か。」

「まあ、成否は六分、四分で四分のほうですが、忠興殿の性を考慮すれば、やってみる価値はあるかと。」

「相分かった、さればその仕上げを楽しみに致しましょうぞ。今福の件はしかと承った。お任せ有れ。」


幸村の策もひそかに動き出していたのだった。


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