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呼び鈴
彼女は呼び鈴を押す。しかし無音。それもそのはず。誰もいないから。空き家だから。無音。
それでも彼女は呼び鈴を押す。反応があるまで。その動作を繰り返す。何度も何度も繰り返す。それでも反応は返ってこない。
無駄なことだとは分かっている。それでも、やらずにはいられないのだ。
頭では異常だと分かっている。けれども、心は正常だと思ってしまっている。
頭と心の不一致。それは静かなもの。けれど、確かに侵蝕するもの。
静かな狂気に蝕まれている。彼女にとって均等を図るための儀式である。
均衡が崩れてしまえば、恐ろしい何かが起こる。それが何かは分からない。けれど、恐ろしいことは確かなのだ。
その恐ろしいことから逃れるために、彼女は今日も呼び鈴を押し続ける。決して鳴ることの無い呼び鈴をーー。




