95/100
独り言
彼は呟く。独り言を。誰もいない部屋で。家族はいない。作ろうとしなかったから。
独り身で人生を過ごしてきた。独りでいることは寂しく感じなかったから。
孤独でいることを愛していたと言ってもいいだろう。彼にとっては孤独でいることが大事な存在であったと言っても過言ではない。
他者から見れば彼のことを変わり者だと言うだろう。実際、彼は変わっている。だが、それが何だと言うのだろうか。
彼からすれば、変わり者だと揶揄している者たちのほうが変わり者だと言うのに。そうやって揶揄わなければ、自己の優位性を保つことができない。優越性コンプレックスを抱えていることに、悲しいかな、気づいていないのだ。
彼のことを揶揄うのを止めれば、それから抜け出せると言うのに。優位性の保身としか見ていないがゆえに気づいていない。彼にしか分からないことだ。指摘しても無駄なのだから。理解されないから。変わり者だというフィルターを通してでしか揶揄する者は見ていないがゆえに。
彼は呟き続ける。誰もいない部屋で。時折、笑い出す。揶揄する者たちへの嘲りを。そして、虚しくため息を吐く。変わり者の彼が望んだ未来はこれでいいのだということをーー。




