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晴れの雨傘

 彼女は変わり者だと揶揄されていた。雨が降っているわけでもないのに、毎日のように大人用の雨傘を差していたから。

何故彼女がそれを持ち、差しているのかは誰にも分からない。

 近所の人が噂をしていても、彼女の耳には届かない。ヘッドフォンをしているから。曲に集中しているのもあるだろう。

 彼女にとって雨傘は顔を見られないようにするための道具である。

 顔にコンプレックスを持つ彼女にとってはマスクも欠かせない。息が籠もりがちになることを除いては。

 彼女は願っていた。早く梅雨になれば良いのに、と。梅雨ならば毎日が雨で誰もが傘を差す。誰も自分を気に留めることはしない。

雨が降る日は彼女にとって、絶好の外出日和。だんだんと世間とのズレが生じているが、彼女は気にしなかった。

誰も彼女に注目しないことが彼女にとっての願いであり、望みでもあるのだから。

 昔の曲を聴きながら散歩する。彼女にとっては体力作りの一つ。お気に入りのプレイリストを作って雨の中を歩いている。アイスブルーの瞳は持ってはいないけども。

インストルメントルの短い曲たちが彼女にマスク越しだが笑みをこぼれさせる。疲れを紛らせる。無言よりちょうど良い。

 彼女は今日も晴れていても、雨が降っていても、傘を差して歩いていくのだろう。お気に入りの曲を聴きながら、顔を隠すようにしてーー。

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