謎のルール
その町の図書館には一つだけ謎のルールがあった。
すなわち、「月光の夜には何があっても利用しないように」というものだった。
守らなければどうなるのか。記憶をすべて奪われてしまうのだ。図書館に住まう怪物に。
怪物は黒い本に化けてるという。そして、月光が訪れるたびに、図書館内にいる人間の記憶を喰らうのだ。あらゆる思い出すべて。身に付けた知恵もすべて。
本に化けているがゆえに、誰も探すことができない。どの本で、どの書庫にあるのか分からないのである。
怪物の正体は本だと言うのに、誰も分からない。正体だけが一人歩きしている。
そもそも、本が正体とは誰が言い出したことなのだろうか。証言はあるんだろうか。
それすら、誰も知らない。確かめようが無いからである。記憶喰らいの本なんて。存在しているのだろうか。しかし、それらの疑問を抱く前に答えは出されていた。
未完成の本が集まる場所。そこに問題の本は眠っていた。様々な人物の記述。最後には決まって、助けて。喰われる。その末尾が共通して記されているのである。
その本を日中の内に見つけることができれば良い。しかし、そこに収められている蔵書は皆貴重な古書ばかり。
どうすれば解決できるのか。館長はその問題について頭を悩ませていた。
悩んで悩んで悩み尽くしていた。しかし日々は不意に終わりを迎えることになる。
ある月光の夜のこと、図書館の未完成の本が集まる場所の窓がいきなり割れたのである。
ガラス製ゆえに音を響かせて。音とともに現れたのは黒衣の人物。それが図書館の怪物と戦い勝利を収めた。
しかし、図書館の怪物によって、記憶を喪われた人々にとっては、記憶が戻ることは無かった。まっさらにされたとしても、記憶喪失者になったとしても、新しい人生を歩んでいたからであるーー。




