記憶と魔女
記憶とは誰もが持っているもの。しかし、それが欠落してしまえばどうなるか。
魔物の中には他者の記憶を喰らい生き長らえる者もいる。
しかし、この魔物を討つことができるのは記憶を喪いながらも、魔術を極めた者のみだという。
そうとある王国の伝説には残されている。
では、この伝説の真相とはどのようなものなのだろうか。複雑なのかシンプルなのか。あるいはカオスなのか。
それは当事者にしか知らないのである。
かつてあるところに魔女がいた。あらゆる魔術を極めていたが、迫害に遭いとある王国の末端に位置する森林へと逃れてきた。
そこならば、人は寄りつくこともない。魔物はいても風の刃で切り裂けばいいとすら考えていた。
人目を避けて、森林を焦がさぬよう、風の刃でさっくりと。それがいつものやり方。
魔女は一人だった。けれど、寂しくは無かった。いつも一人だったから。
たまには気紛れに召喚魔法で呼び寄せたりして、遊んだりする程度。その中には奇妙なねずみがいた。魔女が観察していると、数秒先の未来が見えるようだった。たかが数秒。されど数秒。どのように役立つのかは分からない。
ゆえに、魔女は召喚帰りさせることに決めたのである。
次に召喚したのは、老黒猫のケットシーだった。何やら膨大な力を秘めているが魔女にとって気になることはなかった。むしろ、自嘲気味に笑った。自分の相棒に相応しいかもしれないと思っていたから。
しばらくして、魔女が住まう森林の外の王国では不思議なことが起きていた。誰もがしゃっくりをし始めたのである。しかも、止まることの知らない連続さ。く強制されている感覚まであった。
それはとある魔人によるものだった。気紛れにかけた呪い。それはしゃっくりを止めれば王国を滅ぼすと言うものでもあった。
一人の天使はこの自体を重く見た。しゃっくりは痙攣である。しかし、長時間の痙攣は問題となる。体力を奪うゆえにまともに喋れなくなるからだ。
天使はさてどうしたものかと考えると、天使のもとに一匹の不死鳥が訪れた。
そして、魔女とケットシーの力によって魔人を討つと言う提案をしたのである。
不死鳥ならば、しゃっくりの呪いの影響は受けないし、魔女とケットシーなら、呪いに耐性があると考えてもいたのである。
天使は不死鳥の案を採用した。それで魔人を討てるならば良いと。
早速不死鳥は魔女とケットシーの元に行き、王国の事情を伝えた。
王国を救うメリットも伝えて、魔女の安全を確保したのである。
どうでもいいと思っていた魔女だったが、ケットシーが行きたがっていることを察すると、仕方なく不死鳥に連れられ、王国の元に向かうのだった。
不死鳥は恐怖を抱えたまま、魔人の元へと二人を連れて行ったのである。
魔人はたこの姿をしていた。しかし、魔女が繰り出す魔術の風刃によって、足は斬り裂けられてしまう。
その隙にケットシーの接近を許してしまい、魔力の爪で爪研ぎをするかのように引っかき傷を深々と負わせるのだった。
魔人のたこは為す術も無く討たれてしまい、こうして王国に平和が人知れず戻ったのである。
その様子を見ていた王国の住民たちは、魔女とケットシーを英雄と称えたが、二人は静かに森林の家で静かに暮らしたというーー。




