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深夜の引き出し
その引き出しは深夜のゴミ捨て場に置かれていた。しかも、忽然と。
鍵穴が付いた引き出し。開けるための鍵は不在。乱暴を受けた形跡からするに、無理矢理開けようとしたのだろう。可哀想に。だが、幸いにもその場にいたのは、一人の怪盗だった。ピッキング技術に優れ、開かずの宝箱を開けた実績を持っている。
彼の手にかかれば、正確には彼の持つピッキング技術にかかれば、鍵が不在でも開けることができる。
さて、彼は引き出しの鍵穴を開けると、そこにあったのは忘れられていた思い出だった。
引き出しが現役使われていた時のもの。何十年と語り継がれていったものである。
その記憶の結晶体とも呼べるダイアモンドが密かに輝きを放っていた。
怪盗は月夜に照らされたダイアモンドを見て美しいと感じた。
誰もが見惚れてしまう。そんな輝きを持つ思い出の結晶石。怪盗は軽く笑うと、ゴミ置き場から去っていった。あるいは気づいたらゴミ置き場に迷い込んでいたのかもしれない。
深夜の散歩を楽しんでいた。それだけかもしれない。けれども、巡り会ったのだ。鍵穴に鍵を差し込んでくれる人物に。時の流れに忘れ去られた引き出しはーー。




