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観測

 もしもの話をしよう。もしも、他人の目が自分を視ている。細部まで。そう感じる時って普通は無いよな。

 日常は一人一人違うものだ。なのに、誰かに視られている。今の私はそんな気分なんだ。

観察日記の人間版とでも言おうか。まるで日常生活すべてが誰かに観察、いや、観測されているように思える。気のせいなのかもしれない。ただのナルシストっぽくなっているのかもしれない。けれど、逆に視られていたら、気が触れかねない。

 監視カメラに映されている人々って、常にこんな感じと戦っているとしたら、メンタルが凄いと私は思う。私には向いていない。豆腐メンタルの私には。

 私はくじ運が悪いのかもしれない。たまたま観測対象に選ばれてしまって、常に視られているとしたら、メンタルが崩壊しそうになる。観測対象が私で逆に良かったんじゃないかね。無理にポジティブになるなら。私は男だ。観測者は男女どちらかでも良いだろう。老若男女は気にしても無駄か。でも、奴等のにはできないことをしてみせよう。

 仮説だが、私を視ているのは酒が苦手か断酒しているか。そんな奴の前で酒を呑んだら、観測者はどんな気分になるのか。

こっちを勝手に視てきたんだから、文句は言わせない。嫉妬しても無意味ってことを分からせようじゃないか。

長時間かけてゆっくりと酒を呑んでやる。呑兵衛を観測したって、無意味になることを分からせてやろうじゃないか。

 観測者の観測はできても、介入はできないはず。 

ゆっくりとじっくりと時間をかけて、呑んでやるからな。覚悟しろ、観測者め。

 観測者は酒が呑めないと言う仮説が正しいかどうかの非観測者の決意を舐めるなよーー。


ーー私は彼を観測していた。だがしかし、彼はやりおった。私が断酒していることをどうやって知り得たのか。それは分からない。けれど、解放感に満ちた彼を視ていると、こちらも酒を呑みたくなってくる。彼にどうやら釣られてしまいかねない。私から先手を打った彼の決意を現在は称えようじゃないか。

 さて、私は別の観測対象を探すとしよう。

観測されている奇妙な感覚に襲われたなら、酒を呑むのが特効だと思われないようにしなければ。

明日の彼にはもう誰かに観測されているという自覚は無いはずだと信じたい。のだが、そうそう歯車は変えられるだろうか。私以外の観測者に視られて無ければ良いのだがーー。

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