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希薄
彼の存在と言うのは、あまりにも希薄だった。
親であっても産まれ落ちたことに気づきにくいほどに。
彼が幼い頃、おもちゃで遊んでいても、音だけが響いていた。産んだ親にすら彼を気づいていないのだから。有る意味では怖かったのだろう。ポルターガイストと勘違いするほどには。
しかし、彼は仕方ないと半ば諦めていた。そう言う星の運命の元に産まれてきたのだと信仰するレベルで確信していたのである。
だがしかし、彼の人生に転機が訪れる。頭皮をさらす。それだけで辺りが輝いた。
目立つことの無かった彼が、その時だけ水を得た魚のように、存在感を爆発的に発揮したのである。
火山が噴火するかのごとく、彼は注目を浴びた。しかも、一気にである。
だが、注目することが眩すぎて、会話もままならなかった。
ゆえに彼はカツラという手法を取ることによって自分の存在感をコントロールする術を覚えたのである。その時まではずっと筆談だった。それでしか、周囲が気がつくことが無かったのである。
ある意味において、彼は産まれてくる時代も世界も、間違えてしまったのかもしれない。
それは神の悪戯なのかもしれないのだ。真相は誰も知る由も無いことなのであるーー。




