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紅い月の裏側

 紅い月の裏側には何があるんだろう。と彼は月を見るたびに考えていた。

 夜になると頭上を照らす紅い月のことを。

 それは誰も分かり得ないこと。知ることができないもの。

それでも彼は、紅い月の裏側について考え続けていた。毎夜、月が照らすたびに。

 親しき王に紅い月のことを聞いても分からないと言われた。

 姫君にも紅い月のことを聞いても微笑みながら分からないと言われた。

 獣騎士に聞いても答えは得られなかった。

 しかし、彼は問い考えていた。来る日も来る日も。そのことについて考えていたのだ。紅い月の裏側について。ずっとずっと。まるで学者の霊に取り憑かれたように。

 紅い月の裏側に何があるのか。どんな生き物がいるのか。何故夜にしか現れないのか。どうして、王や姫に力を与えているのか。気になることをずっと考えていた。

 数多の疑問を答えを得ることはできない。まるで砂漠から宝石を手探りで探り当てるようなものだった。

 そして、ある時、ふと気づいたのである。どうして自分はあの紅い月のことを考え続けているのか。答えを知って何を得たいのか。

知ったとしても役に立つのか。そうで無いのか。考えても無駄なことかもしれない。けれども、それによって出てくる問いには意味が有るはず。

 今、彼は紅い月の裏側について知る。その意味について考え始めていた。

 王も姫君にも獣騎士にも心配させるほど、話題に上る程度には考え続けていた。

彼は何度も考えている内にとある結論に至った。

紅い月の裏側にはどこも変わらないと言うことを。しかし、哀しいかな。考え続けているうちに皆の関心は無くなっていた。

それでも、王や姫君や獣騎士は彼について、考え抜いたことを褒めていった。

 考え続けた彼にとって、それは一つの賞賛に値したのであるーー。

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