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古びた椅子

 ある公園には一つだけの椅子が置かれてあった。他はベンチだというのにだ。

椅子にペンキが塗られた訳では無い。良く見ると古びた感じだった。

 しかし、何やら近付くと座りたいとは思わなくなった。空いているのにも関わらず。

どうしてなのか分からない。けれども、座る気がどうしても失せてしまうのだ。

 常に誰かが座っている。誰もいないはずなのに。その気配がして躊躇ってしまう。

不思議な椅子である。もしかして透明人間が座っているのではないだろうか。だから座れないのだ。

勝手に想像している。気晴らしのようなものだ。

 空っぽの椅子で連想するならば、家庭環境だろう。

シングルマザーやファザーで育った子供は、片親が当たり前で座れる椅子は自分と親だけ。

でも、親にとっては、空っぽになった椅子。

 昔読んでいた小説の一節を不意に思い出す。何故思い出せたのかは分からないが。

 誰も座らない椅子。撤去してしまえば良いのに何故しないのだろう。

 あるいはこの公園は元々、神社か寺か何かで祀られていたのが今も椅子の上にあったりして。

常にそこに御神体がいて座り続けているのかもしれない。

 まぁ、すべては私の妄想に過ぎないのだがねーー。

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