↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/50

第4話 損失

 朝からギルドに来ていた。昨日受けたウルフ討伐の報酬を受け取るためだ。受付で報酬を受け取り、そのまま次の依頼を探す。


「今日は何にしようか」


 依頼掲示板には、昨日と同じように大量の依頼書が貼られている。薬草採取、荷物運び、魔物の討伐。どれも、今までならアルトたちと一緒に選んでいたものだ。


「1人って意外と暇だな」


 昨日はウルフを倒して終わりだった。思ったより簡単だったし、報酬も悪くない。この調子なら、1人でも冒険者を続けていけそうだ。


「おい! 誰か治癒魔法を使える奴はいないか!」


 ギルドの入口から、慌てた声が聞こえてきた。


「どうしたんだ?」


「【星の剣】が北の森で魔物に襲われたらしいぞ!」


 その名前を聞いた瞬間、手が止まった。【星の剣】——昨日まで俺がいたパーティ。


「一体何が……」


 気になって入口を見る。そこには数人の冒険者に囲まれた3人の姿があった。


「…………!」


 俺は言葉を失った。

 アルトの鎧はボロボロになっている。リーナは杖を失っていて、服もところどころ破れていた。セシルも顔色が悪く、誰かに肩を借りている。昨日、俺を追放した3人とは思えない姿だった。


「おい、治癒師を呼んでくれ!」


「早くベッドを!」


 ギルドの職員たちが慌ただしく動き始める。俺はその場から動けなかった。


「何があったんだ?」


 思わず口から言葉が出た。すると、アルトがこちらを向いた。


「カイム……」


「アルト……」


 目が合う。アルトは何か言おうとした。だが、その前にリーナが口を開いた。


「Aランクの魔物に遭遇したの」


「Aランク?」


「そう」


 リーナは苦しそうに答える。


「北の森で遭遇したの」


「それで……この怪我?」


 リーナは答えなかった。俺は3人を見る。Aランクの魔物は確かに強い。でも――。


「お前たちならそこまで苦戦しないだろ?」


 誰も答えない。俺は少し違和感を覚えた。


「何があったんだよ」


 アルトが俯く。


「俺たちは……Aランクの魔物に勝てなかった」


 勝てなかった? あのアルトが?


「まさか、撤退したのか?」


「ああ」


 アルトが答える。


「命からがら逃げてきた」


 昨日までなら、そんな話を聞いたら驚いていたと思う。でも今は、別のことが頭に浮かんでいた。俺がいなくなった。そして、急に弱くなった。


「なあ」


 俺はアルトを見る。


「昨日までと何か違わないか?」


「何がだ?」


「お前たちの力だよ」


 アルトが黙る。


「昨日まで、こんなことなかっただろ?」


「そ、それは……っ」


「俺がいた頃は、Aランクの魔物だって何度も倒してきたじゃないか」


 3人は何も答えない。その沈黙で、なんとなくわかった。


「もしかして……」


 俺は自分の手を見る。昨日、自分に使った【強化】。あの異常な力。ウルフを簡単に倒せた。岩だって砕けた。もしかすると――。


「俺のバフがなくなったからか?」


「!」


 アルトが顔を上げた。その反応を見て、俺は確信した。


「やっぱりそうなのか?」


「黙れ……!」


 アルトは苛立たしげに吐き捨てた。


「でも、昨日から明らかにおかしいんだ」


「おかしいって、どんな風に?」


「攻撃力が落ちてる。リーナの魔法も、セシルの回復もだ」


 アルトが拳を握る。


「何度やっても前みたいな力が出ない」


 俺は黙って3人を見る。そこで、ようやく気づいた。俺のバフは、3人を強くしていた。ずっと最初から。俺たちがFランクだった頃も。Dランクになったときも。Aランクになったときも。そして――Sランクになったときも。俺はずっと3人にバフをかけていた。


「俺たちが強くなったんじゃなかった」


「俺が強くしてたのか」


 その言葉を口にすると、妙に納得できた。今まで俺は、自分を弱いと思っていた。だからこそ、アルトたちが強くなっていくのを見て嬉しかった。俺の力が役に立っている。それだけで十分だった。でも――。


「まさか、ここまでとはな」


 俺は苦笑してしまった。


「カイム」


 アルトが俺の名前を呼ぶ。


「何だ?」


「頼みがある」


 アルトが頭を下げた。


「もう一度、俺たちにバフをかけてくれ」


 その瞬間、昨日のことを思い出した。


 ――お前は使えねーんだよ。


 ――雑魚は邪魔だ。


 ――もう、お前のバフは必要ない。


「…………」


 俺は黙ってアルトを見る。昨日まで、俺の力なんて必要ないと言っていた。なのに今は、俺に頭を下げている。


「悪かった」


 アルトが続ける。


「昨日は言いすぎた。俺たちには、お前の力が必要だった」


 その言葉を聞いて、胸の奥が少しだけ痛んだ。嬉しいわけじゃない。むしろ腹が立つ。昨日まで必要ないと言っていたくせに。俺がいなくなって初めて気づいた。それが少しだけ悔しかった。


「カイム……」


 リーナも俺を見る。


「お願い。もう一度だけでいいから……!」


「…………」


 セシルは何も言わない。ただ、俺を見ている。俺は3人を見つめる。昨日まで一緒だった幼馴染。何度も一緒に戦った仲間。それでも――。


「断る」


「…………は?」


 アルトが顔を上げる。


「な、何でだ……?」


「昨日、お前らが言っただろ」


 俺はアルトを見る。


「俺のバフは、もう必要ないって」


「それは……!」


「だからもう使わない」


 アルトが何か言おうとする。だが、俺はそれを遮った。


「俺も、もうお前らに頼らない」


 俺はギルドを出た。外へ出ると、昨日と同じように空は晴れていた。俺は空を見上げる。昨日までは、何もわからなかった。自分が弱いと思っていた。自分には、誰かを支えることしかできないと思っていた。でも違った。俺のバフは、俺自身にも使える。そして――。


「俺1人でも、戦える」


 だったら。もう、あいつらの後ろを歩く必要はない。俺は自分の力で、もっと上を目指せる。


「せっかくだ」


 俺はギルドの掲示板を見る。さっきはウルフ討伐を選んだ。でも、もう少し上の依頼でもいいかもしれない。


「これにするか」


 俺が手に取ったのは、ある依頼書だった。討伐対象――ゴブリン。ただのゴブリンではない。ゴブリンの群れを率いる、上位種。報酬も、昨日のウルフとは比べものにならない。


「面白くなりそうだ」


 俺は依頼書をしっかりと握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。