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戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第二章

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第36話 漆黒

「【強化】!」


 身体に力が流れ込む。


 次の瞬間。


「グルルルッ!」


 男だったものが飛びかかってきた。


「うおっ!」


 俺は横へ飛ぶ。


 ——ドンッ!


 さっきまで俺がいた場所に、男の腕が叩きつけられた。石の床が砕ける。


「いや、威力おかしいだろ!」


「普通の人間じゃない!」


 リゼットが杖を構える。


「【ファイアボール】!」


 炎の球が飛ぶ。


 ——ドンッ!


 男の身体へ直撃した。


「グアアアアッ!」


 男が後方へ吹き飛ぶ。


「やった?」


「待て」


 俺は拳を構える。煙の中、黒い霧が蠢いている。やがて男がゆっくり立ち上がった。身体のあちこちが不自然に動いている。明らかに普通じゃない。


「黒い霧に操られてる?」


「でも、こんな魔法は見たことない」


 男の身体から黒い霧が溢れている。まるで体の中に何かが入り込んでいるようだった。


「グルルル……」


 男がこちらを見る。真っ黒な目。そこに人間らしさは残っていない。倒すしかない。そう思った。


「待って」


 リゼットが俺を止める


「さっきの魔法、男じゃなくて黒い霧の方が苦しんでた」


 言われてみれば、魔法が当たった瞬間。黒い霧が大きく揺れていた。


 リゼットが杖を握る。


「黒い霧を引き剥がせるかもしれない」


 このままではあの男も助からないだろう。  

 

「カイム、動きを止めて」


 俺は地面を蹴った。男へ向かって走る。


「グアアアッ!」


 男が腕を振り回す。


 ——ブンッ!


「速いな!」


 普通の人間の動きじゃない。黒い霧によって身体能力まで強化されているのか。


「【強化】!」


 さらに自分へバフを重ねる。男の懐へ入り込み、腹へ拳を叩き込んだ。  


「ガッ!?」


 男が大きく後ろへ吹き飛び、壁へ激突した。


「今だ!」


 リゼットが杖を前へ向ける。


「【ホーリーライト】!」


 杖の先から白い光が放たれ、光が男を包む。


「グアアアアアッ!」


 男の体から黒い霧が激しく暴れ始めた。


「やっぱり!」


 リゼットが叫ぶ。


「黒い霧に効いてる!」


「グルルルルッ!」


 黒い霧が男の身体から離れようとしている。


「もう少し!」


「【ホーリーライト】!」


 さらに光が強くなる。


「【強化】!」


 俺はリゼットへバフをかける。


「もう1回!」


「【強化】!」


 淡い光が重なる。リゼットの周囲に魔力が溢れた。


「いくよ!」


「【ホーリーライト】!」


 ——ピカァァァッ!


 遺跡の中が白い光で包まれる。


「グアアアアアアッ!」


 黒い霧が男の体から完全に引き剥がされた。


「出た!」


「何だ、あれ!?」


 黒い霧が空中で蠢き、こちらへ向かって飛んできた。


「来たぞ!」


「え!?」


 黒い霧が俺へ迫り、咄嗟に腕を前へ出した。だが、ペンダントが光った。


 ——ピカッ!


「!?」


 黒い霧が俺の目の前で止まった。ペンダントから銀色の光が広がる。黒い霧を包み込む。


「ギィィィィッ!」


 人間ではない奇妙な悲鳴が聞こえた。黒い霧が消えていく。


「消えた……?」


「ペンダントがやったの?」


 俺は手の中を見る。銀色のペンダントは何も変わっていない。


「う……」


「大丈夫か?」


「ここは……」


 男の目は元に戻っていた。


「な、何で俺は……」


「覚えてないのか?」


 男は頭を押さえる。


「遺跡に入って地下へ向かった。黒い霧が——」


 男の顔色が変わる。


「思い出したか?」


「あれに触れた。避けられなかった」


 男は自分の手を見る。


「体が動かなくなって……その後は何も覚えてない」


 やっぱり黒い霧は人間を操るらしい。


「他の仲間は? 一緒に地下へ行ったんだろ?」


「俺を含めて4人いた」


 つまりまだ3人いる。


「この人はどうする?」


「村へ戻ってもらおう」


「でも」


 男は立ち上がろうとする。


「俺も行く」


「無理だ」


「仲間がいる!」


「黒い霧にまた操られるかもしれない」


 男は拳を握る。


「俺たちは金のために遺跡へ入った。雇われたんだ」


「誰に?」


 男の表情が変わる。


「知らない」


「知らない?」


「依頼主は顔を隠していた。黒い石を持ち帰れと」


 俺とリゼットが顔を見合わせる。


「黒い石?」


「遺跡の地下にあると言われた。依頼主はこうも言っていた。その石を手に入れれば世界が変わると」


「急いだ方がいいかも」


 リゼットが小声で言う。


「お前は戻れ。気をつけろ」


 言われた通り、男は遺跡の入口へ向かって歩いていった。地下へ続く階段を見ると、さっきまでよりもさらに暗く見える。


「行くか」


 俺たちは階段を降り始めた。1段、また1段と地下へ進むほど空気が冷たくなっていく。


「何か感じるか?」


「魔力が濃いね」


 階段を降り切ると、その先には長い通路が続いていた。壁には魔法の灯りが並んでいる。


「誰かが点けた?」


 魔法の灯りは古いものではない。最近、使われたように見える。


「盗賊たちか?」


「かも」


 通路の奥から微かに声が聞こえた。


「誰かいる」


 俺とリゼットは立ち止まる。聞こえてくる声——男たちだ。


「仲間か?」 

 

 俺たちは慎重に近づき、通路の角から様子を確認した。そこには2人の男がいた。昨日の盗賊たちだ。


「まだいたか」


「でも」


 リゼットが小声で言う。


「様子がおかしい」


 男たちは壁の前に立っている。何かを探しているようだった。


「見つからねぇぞ!」


「本当にここなのか!?」


「地図にはそう書いてあった!」


 盗賊たちの前には巨大な壁がある。何の変哲もない石壁だが。


「あれ?」


 俺は壁を見る。見覚えがある。


「どうしたの?」


「あの紋章」


 壁に刻まれた模様は俺が持っているペンダントと同じものだった。ペンダントを取り出すと。


 ——ピカッ。


 ペンダントが再び光った。


「!?」


 盗賊たちが振り返る。


「誰だ!?」


 俺たちは隠れる暇もなかった。


「仕方ない」


 俺は通路へ出る。


「お前ら!」


 盗賊の1人が剣を抜く。


「何でここにいる!?」


「それはこっちの台詞だ」


 俺は壁を見てペンダントを握る。すると壁の紋章が光り始めた。


「なっ!?」


「何だ!?」


 ——ゴゴゴゴゴ……。


 巨大な石壁がゆっくりと動き始める。


「隠し扉?」

 

 壁が左右へ開いていく。その奥には小さな部屋があった。部屋の中央には1冊の本。壁には大きな文字が刻まれていた。


「読めるか?」


 リゼットが近づく。


「古代文字」


「読める?」


「少しだけ」


 リゼットは文字を見ると、顔色が変わった。


「何て書いてある?」


「……」


「リゼット?」


 リゼットがゆっくり俺を見る。


「これ」


 壁を指差す。


「オルディス・レイヴンの名前が書いてある」


「え?」


「『我が孫へ』って」


 空気が止まった気がした。俺は部屋の中央を見る。そこに置かれた1冊の本。


「爺ちゃんは俺に何を残したんだ?」


「——その本に触れるな」


 部屋の奥の暗闇から低い声が響いた。振り返ると、そこには1人の男が立っていた。黒いローブで顔は見えない。


「誰だ?」


 男は答えない。ただ、俺が持つペンダントを見ていた。


「やはり」


 男が呟く。


「オルディスの孫か」

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