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戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第二章

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第33話 異常

 拳を振り抜いた瞬間、オーガの身体から溢れていた黒い魔力とぶつかった。今までの魔物とは違う。拳に重い感触が伝わってくる。


「硬っ……!」


 俺は後方へ飛び退いた。普通のオーガなら、今の一撃で多少は怯むはずなのだが。


「グルルルル……」


 オーガはほとんど動いていない。黒い魔力が全身を覆っている。


「カイム!」


 リゼットが叫ぶ。


「大丈夫!?」


「問題ない!」


 俺は拳を見る。痛みはない。



「明らかにおかしい。普通のオーガじゃない!」


 リゼットが杖を構える。


「魔力の質が変!」


「質?」


「上手く説明できない!」


「説明してくれ!」


「とにかく気持ち悪い魔力なの!」


「雑!」


 オーガが咆哮した。


「グオオオオオッ!」


 周囲の空気が震え、村人たちが悲鳴を上げる。


「早く倒さないと!」


 俺は手を前へ向ける。


「【強化】!」


 自分の身体に力が流れ込む。


「【強化】!」


 もう一度かける。身体が軽くなる。オーガが俺へ向かって走り出した。


 ——ドドドドドッ!


「来た!」


 巨大な腕が振り下ろされる。


 ——ブンッ!


 俺は横へ飛ぶ。地面が大きく抉れた。


「おいおい」


 今の攻撃をまともに受けていたら危なかった。


「リゼット!」


「任せて!」


 リゼットの杖に炎が集まる。


「【フレイムランス】!」


 巨大な炎の槍がオーガへ向かって飛んだ。


 ——ズドォォン!


 炎がオーガを包む。


「やった?」


「まだだ!」


 炎の中からオーガが飛び出してきた。


「マジかよ!」


 俺へ向かって拳を振る。俺も拳を握る。


 ——ドゴォン!


 拳と拳がぶつかった。衝撃が全身を走る。


「ぐっ……!」


 俺は歯を食いしばる。力は互角……いや、少し押されている。


「カイム!」


「大丈夫だ!」


 俺はオーガの拳を押し返す。


「【強化】!」


 さらに自分へバフを重ねる。


「グオッ!?」


「おおおっ!」


 力を込める。オーガの腕を弾き飛ばした。


「今だ!」


 俺は一気に距離を詰め、拳を握る。腹へ向かって全力で拳を叩き込む。


 ——ドゴォン!


「グオオオッ!?」


 オーガの巨体が後方へ吹き飛び、地面を転がる。


「よし!」


 俺は距離を取る。


「カイム!」


「まだだ!」


 オーガはゆっくり立ち上がった。しかし、様子がおかしい。体から黒い魔力がさらに溢れ始めた。


「グルル……」


 オーガが苦しそうに頭を押さえる。


「何だ?」


「待って」


 リゼットがオーガを見る。


「魔力が暴走してる」


「暴走?」


「自分で制御できてない!」


 黒い魔力が地面へ流れていく。まるでオーガ自身から出ているわけではないようだった。


「外から何かが入ってる?」


 リゼットが頷く。


「この魔物、何かの影響を受けてる」


 祖父が残した言葉。


『もし西の森に異変が起きたら、地下を探せ』


 偶然とは思えない。 

 

「一気に決める」


 俺は手を向ける。


「【強化】!」


 リゼットの身体を光が包む。


「うおー」


 リゼットが自分の身体を見る。


「これ、かなり来てるよ」


「いけるか?」


「勿論!」


 リゼットが杖を両手で握る。今までよりも遥かに多くの魔力が集まり始めた。



「ちょっと離れて」


「どれくらい?」


「できるだけ」


 リゼットの周囲に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


「【フレイムバースト】!」


 杖の先から巨大な炎が放たれた。


 ——ズガァァァン!


「うおっ!?」


 爆発音が村中に響く。熱風が俺のところまで届いた。思わず腕で顔を覆う。


「熱っ!」


「大丈夫!?」


 炎が消えたその先にオーガは立っていた。オーガの体から黒い魔力が消えている。


 ——ドスン。


 オーガが膝をついた。


「グ……」


 最後に小さく唸る。そのまま地面へ倒れ込んだ。


「倒したのか……?」


 俺たちは慎重に近づく。オーガは完全に動かなくなっていた。黒い魔力も消えている。


「死んだ?」


「うん」


 リゼットが魔力を確認する。


「もう魔力は感じない」


「そうか」


 俺は大きく息を吐いた。


「疲れた……」


「私はまだいけるよ?」


「嘘だろ」


「本当」


 リゼットは元気そうだった。俺のバフ、重ね掛け——魔力の消費まで軽くなっているのだろうか。まだまだ調べることは多そうだ。


「おーい!」


 後ろから声が聞こえた。振り返ると、さっきの老人が近づいてきた。


「大丈夫か?」


「はい」


「怪我は?」


「ありません」


 老人は倒れたオーガを見る。


「しかし」


 表情が険しくなる。


「最近、魔物が増えているとは聞いていたが」


「最近からなんですか?」


 老人は頷く。


「ここ数ヶ月だ。西の森から魔物が出るようになった。昔はこんなことはなかった」


 老人は村の西を見る。


「森の奥は危険だから近づくなと昔から言われていたが、魔物が村まで来ることなどなかった」


「なのに今は?」


「少しずつ増えている」


「爺ちゃんは何を知ってたんだ?」


「行くしかないんじゃない?」


 俺たちは老人を見る。


「西の森について、詳しく教えてもらえませんか?」


「行くつもりか?」


「はい」


「やめておけ」


 老人は首を横に振る。


「あそこは昔から危険な場所だ」


「でも」


 俺は言う。


「俺の祖父が関係してるかもしれない。放っておいたら、この村も危ないかもしれない」


 老人は黙り込んだが、しばらくして。


「わかった」


 老人が頷く。


「なら、村長に会え。西の森について知っていることがある。昔からこの村を守ってきた家系だからな」


 俺とリゼットは顔を見合わせる。


「決まりだな」


 その日の夜、俺たちは村長の家へ向かった。ベルナ村の中央に他の家より少し大きな建物があった。


「ここか」


 俺が扉を叩こうとしたとき、中から大きな音が聞こえた。


 ——ガタンッ!


「お前たちは何者だ!?」


 知らない男の声。


「誰かいるね」


 扉を開けた瞬間。


「動くな!」


「え?」


 目の前に剣を持った男が立っていた。


「何なんだこれ」


 部屋の中には数人の男。そして床に倒れている老人。


「村長さん?」


 俺が呟いた瞬間、男たちが俺たちを見る。


「新しい奴が来たぞ」


「捕まえろ」


「は?」


 男たちが一斉に動いた。


「リゼット!」


「うん!」


 どうやら面倒なことが起きたらしい。

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