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戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第二章

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31話 決断

 エレナと別れてから2日。俺たちは西へ向かう街道を進んでいた。現在のパーティは俺、リゼット、フィオナの3人。


「次の街まであと少しよ」


 フィオナが地図を見ながら言う。


「今日は宿に泊まれそうだな」


「やったー!」


 リゼットが両手を上げる。


「久しぶりのベッド!」


 前方に街が見えてきた。王都ほど大きくはないが、それなりに人が多い。宿や店が並び、街道を行き交う冒険者の姿も見える。


「着いたー!」


 リゼットが先に走っていく。


「おい、あまり離れるなよ!」


「大丈夫ー!」


「大丈夫じゃないやつの返事だな」


 俺たちは街の中へ入った。まずは宿を探す。今日はここで休み、明日から祖父について情報を集める予定だった。


「今日は休みましょう」


 フィオナが言う。


「聞き込みは明日でも遅くないわ」


「そうだな」


 ここ数日は歩き続けていた。流石に少し疲れている。


「カイム!」


 リゼットが宿の前で手を振る。


「ここ空いてるって!」


「早いな」


「行動力があるって言って」

 

 俺たちは宿へ入った。部屋を借り、荷物を置く。

 

 夕方、俺たちは宿の食堂に集まっていた。


「何食べる?」


 リゼットがメニューを見る。


「肉」


「即答」


「腹減ってるからな」


「フィオナは?」


「私は何でもいいわ」


「珍しいな」


 フィオナは普段より静かだった。


「どうした?」


「え?」


「何かあったか?」


「別に」


「そう?」


「ええ」


 フィオナは笑った。


 でも。


 何となく違和感があった。


 何かを考えているような。


 そんな感じがする。


 食事を終えたあと。


 俺とリゼットは部屋へ戻ろうとした。


「カイム」


 後ろからフィオナに呼ばれる。


「ん?」


「少し話があるの」


「今?」


「ええ」


 俺はリゼットを見る。


「先に戻ってる?」


「私もいる」


 リゼットが即答する。


「駄目?」


「別にいいけど」


 俺たちは再び席へ座った。


 食堂にはほとんど人がいない。


 フィオナは少しだけ黙っていた。


「フィオナ?」


 リゼットが聞く。


「何の話?」


「……私」


 フィオナが口を開く。


「冒険者を辞めようと思ってる」


「…………」


 一瞬。


 意味がわからなかった。


「辞める?」


 俺が聞き返す。


「ええ」


「冒険者を?」


「そう」


 リゼットも驚いた顔をしている。


「何で?」


 フィオナは自分の手を見る。


 しばらくして。


「故郷に帰ろうと思う」


「故郷?」


「ええ」


 俺はフィオナの話を待つ。


「私の故郷に、おばあちゃんがいるの」


「……」


「今は1人で暮らしてるわ」


 フィオナは静かに続ける。


「両親はもういない」


「だから、おばあちゃんだけなの」


 初めて聞いた。


 フィオナにも。


 そんな家族がいた。


「ずっと気になってた」


 フィオナは言う。


「でも、冒険者になってからはあまり帰ってなかった」


 冒険者になれば、仕事のために各地を移動する。


 故郷へ帰る時間も減る。


「最近、手紙が届いたの」


「手紙?」


「近所の人から」


 フィオナの表情が少し曇る。


「おばあちゃんが前より体調を崩すことが増えたって」


「……」


「大丈夫だとは書いてあった。でも」


 フィオナは小さく笑った。


「心配になっちゃって」


 俺は何も言わなかった。


「今までずっと」


 フィオナが続ける。


「まだ大丈夫って、自分に言い聞かせてた」


「冒険者としてもっと強くなりたい」


「もっと色んな場所へ行きたい」


「そう思ってたから」


 フィオナは顔を上げる。


「でも」


 俺たちを見る。


「今、本当に大切なものは何だろうって考えたの」


「…………」


「そしたら」


 フィオナは少しだけ笑った。


「おばあちゃんの顔が浮かんだ」


 リゼットが黙って聞いている。


「私」


 フィオナが言う。


「おばあちゃんのそばにいたい」


 その言葉は。


 迷いではなかった。


 もう決めている。


「だから」


 フィオナは続ける。


「故郷へ帰る」


「冒険者を辞めて?」


「ええ」


「本当に?」


「うん」


 フィオナは頷いた。


「今は、それが一番したいことだから」


 俺は少しだけ考える。


 そして。


「わかった」


「……」


「止めない」


 フィオナが俺を見る。


「いいの?」


「何が?」


「パーティを抜けるのよ?」


「それは寂しいけど」


 俺は笑う。


「家族が心配なんだろ?」


「ええ」


「なら帰ればいい」


「カイム……」


「俺も祖父を探してるからな」


 フィオナの気持ちは少しわかる。


 大切な家族がいる。


 会いたい。


 そばにいたい。


 だったら。


 他のことを後回しにしてもいい。


「おばあちゃんのそばにいてやれよ」


「……うん」


 フィオナの目が少し潤んだ。


「泣いてる?」


「泣いてない」


「泣いてるよね?」


「泣いてないわ」


「いや、泣いて――」


「泣いてない!」


「はい」


 リゼットが口を開く。


「私も寂しい」


 フィオナを見る。


「せっかく仲間になったのに」


「ごめんね」


「でも」


 リゼットは少し笑う。


「おばあちゃんのところに帰るなら仕方ない」


「リゼット……」


「その代わり!」


 リゼットが指を立てる。


「絶対また会おうね!」


「……え?」


「会うでしょ?」


「でも私は冒険者を辞めるのよ?」


「関係ないよ」


 リゼットは笑う。


「冒険者じゃなくなっても、フィオナはフィオナじゃん」


「…………」


「だから、また会おう」


 フィオナはしばらく黙っていた。


 そして。


「……そうね」


 笑った。


「また会いましょう」


「ああ」


 俺も頷く。


「別にもう二度と会えないわけじゃない」


「そうね」


 その夜。


 俺たちは遅くまで話した。


 これまでのこと。


 初めてフィオナと出会った日のこと。


 一緒に依頼を受けたこと。


 魔物と戦ったこと。


 リゼットが変な魔法を使ったこと。


「変な魔法って何?」


「色々」


「酷い!」


「事実だろ」


「カイムまで!」


 そんな話をしながら。


 気づけば夜になっていた。


 翌朝。


 俺たちは街の門までフィオナを見送りに来ていた。


「もう行くのか?」


「早く帰りたいから」


「そうか」


 フィオナの故郷は、ここから南の方にあるらしい。


 俺たちが向かうベルナ村とは逆方向。


 ここで本当に別れることになる。


「これ」


 フィオナが冒険者証を取り出した。


「昨日、ギルドに返してきたわ」


「……」


「これで正式に冒険者じゃなくなった」


「本当に辞めたんだな」


「ええ」


 フィオナは頷く。


「少しだけ寂しいけど」


「後悔してる?」


「してない」


 即答だった。


「おばあちゃんのところへ帰りたい」


「ならいいんじゃないか」


「そうね」


 フィオナが笑う。


「カイムは」


 俺を見る。


「おじいさんを探すのよね」


「ああ」


「見つけてね」


「もちろん」


「伝説の賢者なんだから」


「俺も早く会いたいよ」


 色々聞きたいことがある。


 俺の【強化】について。


 なぜ祖父は姿を消したのか。


 そして。


 俺に何を残したのか。


「じゃあ」


 フィオナが荷物を背負う。


「行くわ」


「気をつけろよ」


「カイムたちも」


 リゼットがフィオナへ近づく。


「またね!」


「ええ」


「絶対だよ!」


「わかってるわ」


 フィオナはリゼットの頭を軽く撫でた。


「……子供扱い!」


「してないわよ」


「した!」


「してない」


「したー!」


「元気だな」


 俺は少し笑う。


 フィオナは最後に俺を見る。


「カイム」


「ん?」


「ありがとう」


「何が?」


「一緒にいてくれて」


「……」


「楽しかったわ」


 俺も笑う。


「俺もだ」


 それだけでよかった。


「じゃあね」


「ああ」


 フィオナは背を向ける。


 そして。


 故郷へ向かって歩き始めた。


 その姿が少しずつ遠くなっていく。


「……行っちゃったね」


 リゼットが呟く。


「ああ」


「また2人になった」


「そうだな」


 エレナが別行動になり。


 そしてフィオナもパーティを抜けた。


 気づけば。


 俺とリゼットだけになっている。


「寂しい?」


 リゼットが聞く。


「まあな」


「私も」


 リゼットは前を見る。


「でも、これでいいんだよね」


「ああ」


 フィオナにはフィオナの人生がある。


 俺たちとずっと一緒にいる必要なんてない。


 家族のそばにいたいなら。


 そこへ帰ればいい。


「俺たちも行くか」


 俺は西を見る。


 ベルナ村。


 祖父が残した手がかり。


 まだ旅は終わっていない。


「次の街へ向かおう」


「うん!」


 俺とリゼットは歩き始めた。


 これからは再び2人。


 最初にパーティを組んだときと同じだ。


「カイム」


「ん?」


「これからもよろしくね」


「今さらだな」


「いいの!」


 リゼットが笑う。


「よろしく!」


「ああ」


 俺も笑った。


「よろしくな」

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