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戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第二章

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第30話 任務

 地面が揺れた。焚き火の向こうの森の奥から巨大な影が現れる。


「何だ、あれ」


 月明かりに照らされ、その姿が見える。熊だった。ただし、普通の熊じゃない。立ち上がれば3メートル近くある。全身は黒い毛に覆われ、両腕には鋭い爪が生えていた。


「ブラックベア……」

 

 ウルフより遥かに強い。


「何でこんなところにいるんだ?」


 ブラックベアが俺たちを見る。その赤い目は明らかに普通じゃない。


 ——グルルルル……。


「カイム!」


 後ろからフィオナの声が聞こえた。どうやら全員起きたらしい。


「うわ」


 リゼットがブラックベアを見る。


「大きいね」


「感想それだけ?」


「他に何を言えばいいの?」


「危機感とか」


「あるよ?」


「あるように見えない」


 ブラックベアが一歩前へ出る。


 ——ドスン!


「来るぞ!」


 俺は手を前へ向けた。


「【強化】!」


 淡い光が3人を包む。


「フィオナ!」


「任せて!」


 フィオナが剣を抜くと、ブラックベアが地面を蹴った。


「速っ!?」


 巨体からは想像できない速度でフィオナへ向かって突進する。


 ——ブンッ!


 巨大な腕が振り下ろされた。フィオナが横へ飛ぶ。爪が地面を抉った。


「【ファイアボール】!」


 リゼットの魔法がブラックベアへ命中する。


 ——ドンッ!


「やったか」


「まだ!」


 炎の中からブラックベアが飛び出す。ほとんど効いていない。


「硬いな!」


「普通のブラックベアより強い」


 エレナが剣を構える。


「【ウインドカッター】!」


 風の刃が飛び、ブラックベアの腕を切り裂いた。


「グオオオオッ!」


 魔物が咆哮する。


「傷はついた!」


「なら!」


 フィオナが前へ出て剣を構える。


「【ブレードスラッシュ】!」


 剣に魔力が集まり、フィオナが一気に距離を詰めた。


 ——ズバァッ!


「グオオッ!」


 ブラックベアの身体に深い傷が入る。


「よし!」


「フィオナ!」


 ブラックベアの腕が横から迫る。


「……っ!」


 避けられない——そう思った。


「【ストーンウォール】!」


 リゼットの魔法が発動する。フィオナの前に石の壁が出現した。


 ——ドゴォン!


 ブラックベアの攻撃が壁を破壊する。しかし、その一瞬で十分だった。


「今だ!」


 俺は自分へバフを使う。


「【強化】!」


 身体に力が流れ込む。


「もう1回!」


 俺は地面を蹴った。


「カイム!?」


 ブラックベアへ向かって走る。魔物が俺を見る。


「悪いな」


 拳を握る。


「寝てもらうぞ」


 ——ドゴォン!


「グオオオッ!?」


 拳がブラックベアの腹に突き刺さる。巨大な身体が浮いた。そのまま数メートル後方へ吹き飛ぶ。


 ——ズドォン!


「…………」


 ブラックベアが地面に倒れ、しばらく動かなかった。


「やったか」


 俺は距離を取る。


「カイム」


 リゼットが俺を見る。


「魔物を殴り飛ばすバッファーって何?」


 少しして、ブラックベアが完全に動かなくなった。どうやら倒せたらしい。


「怪我は?」


 俺は3人を見る。


「大丈夫」


 フィオナが答える。


「エレナは?」


「問題ない」


「リゼット」


「無傷!」


「ならよかった」


 俺たちはブラックベアを確認する。


「やっぱり魔力が強い」


 エレナが魔物を見ながら言う。


「何かおかしいのか?」


「普通の個体じゃない」


「さっきのウルフもそうだったよな」


 フィオナが周囲を見る。


「この辺りの魔物、何かに影響されている可能性があるわ」


「今は寝よう」



 俺たちは再び野営の準備を整えた。今度は交代で見張りをすることにする。幸い、その後は何も起きなかった。


 翌朝。


「うーん……」


 俺は大きく伸びをする。


「寝づらかったな」


「野営だからね」


 フィオナが答える。


「宿と比べないで」


「わかってる」


 朝食を済ませ、出発の準備をする。エレナが何かを取り出した。


「どうした」


「連絡用の魔道具だ」


 エレナの手の中に小さな石があった。昨日まで見たことがなかった。石が淡く光っている。


「王国騎士団からだ」


 エレナが魔力を流す。すると、石の上に文字が浮かび上がった。


『至急帰還せよ』


 エレナの表情が変わる。


「何かあったのか?」


「新しい任務のようだ」


「急だな」


「騎士団は急に命令が来ることもある」


 エレナは文字を見つめていたが、しばらくして。


「すまない。一旦、王都へ戻らなければならない」


 エレナは王国の騎士だ。冒険者とは違う。自由に行動できるわけではない。


「どんな任務なんだ?」


「詳しいことは戻らないとわからない」


「危険なのか?」


「さあな。しかし案ずることはない」


 リゼットが少し寂しそうな顔をする。


「エレナ、戻っちゃうんだ。せっかく一緒にベルナ村へ行くと思ったのに」


「任務が終わったら、また合流する。だから先に行っててくれ」


「わかった。任務なら仕方ない。終わったら来いよ」


「約束する」


 エレナは力強く頷いた。

 

 俺たちは街道を少し戻った。途中にある分かれ道。西へ進めばベルナ村。東へ戻れば王都。ここでエレナとは別れる。


「世話になった」


 エレナが荷物を背負う。


「また会おう」


「またな」


 エレナは王都へ向かって歩き始め、少し進んだところで一度だけ振り返った。エレナの姿が見えなくなるまで俺たちはその場に立っていた。


「行っちゃったね」


 リゼットが名残惜しそうに呟く。


「また会えるよ」


「そうだね」


「私たちも行きましょう」


 俺たちは西へ向かう。

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