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戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第二章

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第28話 故郷

「で、カイムの故郷ってどこなの?」


 王都の市場を歩きながら、リゼットが聞いてくる。


「王都から西の方にある、小さな村だ」


「名前は?」


「ベルナ村」


「聞いたことない」


「だろうな」


 俺自身、王都へ来てから故郷の名前を聞いたことはほとんどない。それくらい小さな村だった。特別な名産があるわけでもない。有名な観光地があるわけでもない。ただ、山と森に囲まれた普通の村だ。


「そこに伝説の賢者が住んでたの?」


 フィオナが聞く。


「そうみたいだな」


「何だか想像できないわね」


「それにしても、じいちゃんが伝説の賢者だったなんて……まだあまり実感がないな」


 リゼットたちから名前を聞くまで、俺は何も知らなかった。オルディス・レイヴン——伝説の賢者。100年以上前から存在が確認されている大魔法使い。そんな人物が、俺の祖父だとは。


「でもさー」


 リゼットが俺を見る。


「カイムはおじいちゃんから何か聞いてないの? 冒険の話とかさ」


「聞いたけど、昔話ばっかりだったぞ。魔王を追いかけたとか、王様の城を半分壊したとか」


 リゼットが止まる。


「それ全部、本当の話なんじゃない?」


「まさか。じいちゃん酒飲みながら話してたからさ。結構酔っ払ってたし」


「伝説の賢者が竜と戦った話は、実際に記録が残ってるよ! 魔王を追いかけたって話も! 王城を壊した話も!」


「マジか」


 俺は今まで、祖父の昔話をほとんど信じていなかった。子供の頃は面白い話だと思って聞いていた。だが、大人になるにつれて、どうせ適当な話だろうと思っていた。


「じいちゃん……」


 とんでもないことしてるじゃないか。


「何で黙ってたんだ」


「カイムが知らなかっただけでしょ」


 フィオナがからかうように笑う。


「あなたのお祖父さんも、面白い人だったみたいね」


「変なじいちゃんだったぞ」


 俺たちは市場で必要なものを買っていた。食料、水、野営用の道具。

 王都からベルナ村までは、馬車を使っても数日はかかる。途中からは山道になるため、最後は徒歩になる。


「これで全部か?」


 俺は荷物を確認する。


「ええ、食料は5日分」


「5日も必要なのか?」


「何かあったときのため」


「カイムー!」


 少し離れた場所からリゼットが手を振る。


「こっち来てー!」


「何だ?」


 俺たちはリゼットのところへ向かった。リゼットは露店の前に立っていた。


「これ見て!」


 手に持っていたのは小さな地図だった。


「地図?」


「西の地方の地図!」


「買ったのか?」


「買ったよー」


 リゼットが地図を広げる。


「ここが王都」


 指差す。


「で、こっちがベルナ村」


「結構遠いな」


「だからさ」


 リゼットが地図を見ながら言う。


「途中でいくつか街を通るんだけど、賢者について聞き込みできるかも」


「聞き込み?」


「オルディス・レイヴンは100年以上生きてるんでしょ? だったら、誰かが見てる可能性がある」


「なるほど」


 いきなり故郷へ行って何もなかったら困る。途中の街で情報を集めるのも悪くない。


「でも」


 フィオナが地図を見る。


「この辺りは昔から魔物が多いわ」


「危険なのか?」


「最近は特に」


「何かあったのか?」


「わからない。でも、ギルドの依頼が増えてる」


 俺は地図を見る。王都から西——ベルナ村へ向かう途中には、大きな森がある。


「まあ」


 俺は荷物を背負う。


「魔物が出ても、倒せばいいだけだろ」


「カイムが言うと怖いなぁ」


 リゼットが呟く。


「何で?」


「最近、Aランク魔物を殴り飛ばした人だから」


「倒したのは俺だけじゃない」


「でも殴ったよね?」


「……殴った」


「ほら」


 俺たちは市場を出た。出発は明日の朝。今日は準備だけで終わる予定だった。


「カイム」


 不意に後ろから声をかけられた。振り返ると、そこには見覚えのない老人が立っていた。白い髪、長い髭、そして杖を持っている。一瞬祖父かと思った。


「誰だ?」


「お前がカイムか?」


「そうだけど」


 老人は俺をじっと見る。その目には、妙な鋭さがあった。


「オルディス・レイヴン——伝説の賢者の孫」


 俺たちの空気が変わる。


「何でそれを?」


「聞いたからだ」


「誰に」


「噂というものは広がる」


 昨日。俺たちはギルドでブラックファングを討伐した。そのとき、ギルドマスターもいた。そして今日、祖父の話をしていた。とはいえ。


「早すぎないか?」


 老人は少し笑った。


「そうとも言える」


 怪しい。フィオナもエレナも、自然に俺の近くへ移動していた。


「何の用だ?」


 老人は杖を地面につく。


「探しているのだろう?」


「何を」


「祖父を」


 俺は目を細める。


「知ってるのか?」


「オルディスの居場所を」


 老人はしばらく黙る。


「昔は知っていた。今はわからん」


 老人は俺を見る。


「だが、手がかりならある」


「どうする?」


 俺は3人を見る。リゼットは完全に興味津々だった。フィオナは警戒している。エレナは老人から目を離していない。


「聞かせてくれ」


 俺は答えた。


「じいちゃんの手がかりを」


 老人は頷く。


「なら、ついて来い」


「どこへ?」


「少し離れた場所だ」


「ここで話せないのか?」


「話せる」

 

 怪しい。明らかに怪しい。だが、祖父の名前を知っている。俺が孫だということも知っている。


「どうする?」


 フィオナが小声で聞く。


「行くの?」


「行こう。ただし」


 俺は老人に言う。


「変な場所だったらすぐ帰るからな」


「安心しろ。もっと変な場所だ」


 リゼットが笑う。


「面白そうじゃん!」


「お前は何でも面白がるな」


「だって冒険だよ?」


「違う。知らない老人について行くだけだ」


「それを冒険って言うんだよ」


「言わない」


 俺たちは老人の後を追った。市場を抜け、人通りの少ない道へ入る。


「なあ」


 俺は老人に聞く。


「名前くらい教えてくれないか?」

 

 老人は振り返る。


「ワイズだ」


「本名か?」


「そういうことにしておけ」


「絶対違うな」


 老人――ワイズは笑った。しばらく歩く。やがて、王都の外れにある古い建物の前へ着いた。


「ここだ」


 看板を見ると、文字は消えかかっている。


「古本屋?」


「正確には違う。魔道具屋だった」


「だった?」


「今は誰も使っていない」


 ワイズが扉を開ける。中は薄暗い。棚には大量の本や古い魔道具が並んでいた。


「何だここ」


 リゼットが目を輝かせる。


「凄い……!」


「触るな」


 ワイズが言う。


「爆発するものがある」


「えっ!」


 リゼットが手を引っ込めた。


「爆発するの!?」


「昔、オルディスが作ったものもある」


「じいちゃんが? 何でそんなものがここに?」


「昔、ここを使っていたからだ。正確には、研究仲間と一緒にな」


 知らなかった。祖父がこんな場所を持っていたことも、研究仲間がいたことも。


「これだ」


 ワイズが棚の奥から、1冊の古い本を取り出した。


「オルディスが残した記録」


「じいちゃんの? 何が書いてあるんだ?」


「それを確認するために、お前を呼んだ」


 ワイズは本を俺へ差し出す。


「その本には封印がかかっている。オルディス本人か、その血を引く者にしか開けられない」


 俺は本を受け取った。古い本だ。表紙には何も書かれていない。


「俺に開けられるのか?」


「試せ」


 俺は本を開こうとするが、開かない。


「駄目じゃないか」


「まだだ。魔力を流せ」


 俺は本へ手を置き、魔力を流す。


 ——カチッ。


 本の中央から、小さな音がした。次の瞬間、表紙に文字が浮かび上がる。


【我が孫へ】


「じいちゃん……?」


 間違いない。この文字は子供の頃に見た祖父の文字と同じだった。


 俺はゆっくりページを開く。最初のページには祖父からの言葉が書かれていた。


【カイムへ。もしお前がこれを読んでいるなら、おそらくお前は自分の力について疑問を持ち始めているのだろう】


「……!」


 手が止まる。


【安心しろ。お前は間違っていない。そして、お前の力はまだ始まったばかりだ】


 リゼットたちも、後ろから本を覗き込んでいる。


【もし全てを知りたいのなら、私を探せ。最初の手がかりはお前が生まれ育った場所にある。ベルナ村へ行け】


 俺たちは顔を見合わせた。  

 

「最初から、カイムが来ることを予想してた?」


「そんなわけ……」


 言いかけて本を見る。祖父ならあり得る気がした。


「じいちゃん」


 俺は思わず笑う。


「本当に何考えてるかわからないな」


 俺たちは店を出る。明日、王都を出発する。目的地はベルナ村。俺が生まれ育った場所だ。そして、伝説の賢者が最後に俺へ残した手がかりがある場所でもある。

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