↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/50

第21話 吉日②

 王都へ戻った俺たちは、グラットベアの討伐についてギルドへ報告した。依頼とは別の魔物だったため、討伐報酬は少なかったが、それでも素材の買い取りと合わせれば悪くない金額になるらしい。

 その後、俺たちは王都の外れにある冒険者用の訓練場へ向かった。

 そこは魔法や剣の練習をするために作られた広い場所で、頑丈な壁や人形型の的が並んでいる。依頼を受けていない冒険者が自由に訓練できるため、昼間でも何人かの冒険者がいた。


「ここなら大丈夫だな。人も少ないし」


「よし」


 フィオナが剣を抜いた。


「まずは普通に動いてみる」


「何をするんだ?」


「的を使う」


 フィオナは少し離れた場所にある木製の的へ向かった。


「見てなさい」


 そう言うと、剣を構える。


「はっ!」


 フィオナの姿が一瞬消えたように見えた。気づいたときには、フィオナは的の前にいた。彼女が剣を振ると、木製の的が真っ二つになった。


「凄いな」


「でしょ?」


 フィオナがこちらを見る。


「これくらいは普通よ」


「なかなかやるな」


 フィオナとエレナは、少しだけお互いを意識しているようだった。同じ剣士だからだろうか。


「次はバフをかければいいんだよな?」


 俺はフィオナへ近づく。


「準備はいいか?」


「いつでも」


 フィオナは自信ありげに笑う。俺は手をフィオナへ向ける。


「【強化】」


 淡い光がフィオナの身体を包んだ。


「どうだ?」


「これが……バフ」


 フィオナは自分の手を見る。


「体が軽いわ。でもそれだけじゃない。力が溢れてくる」


 フィオナは再び剣を構える。


「いくわよ」


 地面を蹴る。


「!?」


 俺は思わず目を見開いた。速い。さっきまでのフィオナとは明らかに違う速度だった。


「わっ!」


 フィオナ自身も驚いたのか、勢いを止めきれずに前へ進んでいく。


「と、止まれない!」


 フィオナは訓練場の壁にぶつかった。


「大丈夫か?」


「大丈夫……」


 フィオナが壁から離れる。


「ちょっと予想以上だっただけ」


「顔からぶつかってたぞ」


「見てたの?」


「見た」


「忘れなさい!」


 フィオナは少し顔を赤くしながら、再び剣を構える。


「もう1回」


 フィオナはゆっくりと深呼吸する。


「いくわよ」


 今度は最初から慎重に地面を蹴った。


「速い……!」


 フィオナは訓練場を駆け抜ける。目にも止まらない速度で移動し、次々と木製の的を斬っていく。


「凄い……! 身体能力だけじゃない。剣を振る速度も上がってる」


「バフで身体能力を強化してるからな」


「それだけじゃないと思う」


 リゼットが俺とフィオナを見る。


「フィオナの魔力も強くなってるよ。剣に流してる魔力まで強化されてるから」


 フィオナの剣は、うっすらと光を纏っていた。


 フィオナが戻ってくると、彼女の息はほとんど乱れていない。


「最高ね」


 フィオナは笑った。


「今まで感じたことのないくらい、身体が動くわ。もう1回かけてくれない?」


 俺はもう一度、フィオナへ手を向けた。再び淡い光がフィオナを包む。フィオナの目が見開かれる。


「さっきの強化が消えてない」


「普通は同じ強化魔法を使っても、効果は重ならないらしいけど」


「でも、カイムのは重なるんだよね。しかも、今のところ回数制限もわかってない」


 フィオナは自分の手を見る。その表情が少しずつ変わっていく。


「もっと、もっと試してみたい。どこまで強くなれるのか」


 俺はフィオナへ手を向ける。


「あと1回だけだ」


「どうして?」


「安全のため」


「そうだね」


 リゼットが俺の意見に同意した。


「フィオナの体がどこまで耐えられるかわからないし」


「はぁ〜? 絶えられるに決まってるでしょ! 舐めないでよね」


「今回は折れてくれ」


 フィオナは少しだけ不満そうだったが、やがて小さく頷いた。


「わかったわよ」


 俺は3回目の【強化】を使う。


「【強化】」


  フィオナの身体を包む光が、今までより強くなった。フィオナが目を閉じる。


「フィオナ?」


 フィオナはゆっくりと目を開き、自分の剣を見る。


「今なら何でも斬れそう」


「気の所為じゃないか?」


「試してみればわかるわ」


 フィオナは訓練場の奥へ向かう。


「何をする気だ?」


「まあ見てなさいよ」


「嫌な予感しかしないんだが」


 フィオナは、訓練場の端にある大きな岩の前で止まった。高さ3mほどある巨大な岩。


「馬鹿なのか?」


 俺の嫌な予感が当たった。


「斬るわよ」


「待て待て。その岩、訓練場の設備じゃないのか?」


「多分自然の岩でしょ」


「多分でやるな!」


「いくわよ」


 フィオナが剣を構える。


「おい!」


 止める暇もなかった。


「はああっ!」


 フィオナが剣を振ると、巨大な岩はゆっくりとずれ、真っ二つになった。


「どう?」


 フィオナが振り返る。


「斬れたわよ」


「見ればわかる」


「凄いでしょ?」


「凄いけど」


 俺は真っ二つになった岩を見る。


「やりすぎ」


「何でよ!?」


「訓練場を壊すな」


「岩しか壊してないわよ!」


 フィオナは不服そうに頬を膨らませる。すると、リゼットが真っ二つの岩を見ながら呟いた。


「やっぱり凄いや。カイムのバフ」


 リゼットが俺を見る。


「リゼットやエレナだけじゃない。元々強い人に使えば、その人の力をさらに引き出せる」


 フィオナも自分の剣を見る。


「この力があれば、私はもっと強くなれる。Sランクだって夢じゃない」


 その言葉には、最初に会ったときとは違う重みがあった。フィオナは本気で強くなりたいと思っている。だからこそ俺のバフに興味を持ったのだろう。


「ねえ、カイム。私と組まない?」


「え?」


 一瞬、意味がわからなかった。


「組むって」


「パーティに決まってるじゃないの」


 フィオナは当たり前のように言う。


「私、今までソロだったけど」


 俺たち3人を見る。


「悪くないかもって思った」


 リゼットもエレナも特に反対している様子はない。


「どうする?」


 俺が聞くと、エレナはすぐに答えた。


「好きにすればいい」


「同じく」


 リゼットも頷く。


「あんたはどうなの?」


 フィオナの問いに俺は考える。正直、まだフィオナのことをよく知らない。今日会ったばかりだ。ぶっちゃけ性格も少し面倒くさい。でも、強くなりたいという気持ちは本物だと思う。それに、1人で戦ってきた奴が自分から誰かと組みたいと言うのだ。


「すぐには決められない」


 フィオナの表情が少しだけ曇る。だが、俺は続けた。


「でも、一緒に依頼を受けるくらいならいい。何回か一緒にやって、それから決めればいいだろ」


 フィオナはしばらく俺を見ていた。


「ふふっ。それも悪くないわね」


 少しずつ俺の周りには人が増えていた。それが悪いことだとは思わない。むしろこれから先が少しだけ楽しみになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。