↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/50

第2話 異変①

「さて……どうするかな」


 ウルフを倒した俺は、路地裏で立ち尽くしていた。勢いで倒してしまったが、冷静になって考えてみると、今の俺にはやることがない。

 パーティは追放された。泊まる場所もない。金は多少あるが、これから何日も暮らせるほど余裕があるわけじゃない。


「やっぱり冒険者を続けるしかないか」


 俺にはそれくらいしかできることがない。問題は――。


「1人で依頼を受けたことがないんだよな」


 今まではアルトたちと一緒だった。依頼を探すのも、受けるのも、魔物と戦うのも全部4人。俺は後ろからバフをかけていればよかった。でも、もうそれはできない。


「まあ、なんとかなるだろ」


 自分に言い聞かせるように呟く。今の俺には、以前とは違う力がある。自分にバフをかければ、魔物だって倒せる。だったら、1人でも冒険者を続けられるはずだ。


 俺はギルドへ戻ることにした。ギルドに入った瞬間、何人かの冒険者がこちらを見る。まあ、当然か。俺はついさっきまでSランクパーティ【星の剣】の一員だった。王都ではそれなりに知られている。


「あれ、カイムじゃね?」


「【星の剣】の?」


「何で1人なんだ?」


 周囲の声が聞こえてくる。俺は聞こえないふりをして受付へ向かった。


「すみません」


「はい、どうされましたか?」


 受付のお姉さんが笑顔で答える。


「依頼を受けたいんですけど」


「はい。パーティでの依頼でしょうか?」


「いや、1人です」


「1人、ですか?」


 受付のお姉さんの笑顔が少し固まった。


「はい」


「失礼ですが……カイムさんは、【星の剣】の方ですよね?」


「まあ……元、ですけどね」


「……そうですか」


 何か察したらしい。でも、それ以上は聞いてこなかった。


「それでは、こちらから選んでください」


 依頼書を何枚か見せてもらう。薬草採取。荷物運び。街の外に出ての簡単な討伐。色々とある。


「これにします」


 俺が選んだのは街の近くに出るウルフの討伐依頼だった。


「ウルフ討伐ですか?」


「はい」


「ですが、こちらは最低でもDランク以上が推奨となっています」


「大丈夫です。さっきも倒したので」


「さっき?」


「あ、いえ! 何でもありません」


 危ない危ない。自分にバフをかけて木箱を吹き飛ばしたことまで説明する必要はない。


「では、依頼を受け付けますね」


「お願いします」


 依頼書を受け取る。これだけなら、今までと何も変わらない。ただ――隣に仲間がいない。それだけだった。


「行くか」


 俺はギルドを出た。向かうのは王都の西にある平原。ウルフが出る場所だ。歩きながら、俺はさっきのことを考えていた。自分への【強化】。あれは一体、どれくらいの効果なんだろう。石を砕いた。木箱も吹き飛ばした。ウルフだって一撃だった。でも、まだよくわからない。


「試してみよう」


 街を出て、人のいない場所まで移動する。周囲を確認する。


「【強化】」


 身体が熱くなる。やっぱり、この感覚だ。


「身体能力が上がってる……?」


 走ってみる。


 ——タッ!


「わっ!?」


 地面を蹴った瞬間、一気に身体が前へ飛び出した。


「速っ!」


 慌てて足を止める。そのまま止まれず、数メートル先まで走ってしまった。


「これ、加減しないと危ないな」


 今まで俺が使っていたバフは、仲間の能力を少しずつ強化するものだと思っていた。でも自分に使った場合、その効果は明らかに違う。いや、違うというより――。


「俺が弱かったから、気づかなかっただけか?」


 今まで俺は、アルトたちを強くすることばかり考えていた。だから自分がどれだけ強くなるのかなんて、考えたこともなかった。俺は近くにあった岩へ近づく。


「これならどうだ?」


 拳を握る。力を入れすぎないようにして、岩を殴る。


 ——ドゴォン!


 岩にヒビが入った。


「……嘘だろ」


 今度は少しだけ力を抜いて殴る。


 ——ドンッ!


 岩が大きく砕けた。


「これ、本当に俺の力なのか?」


 信じられない。昨日までの俺なら、こんな岩を殴ったら当然手が痛くなっていただろう。なのに今はどうだ。痛みなんてほとんどない。


「こんなスキルだったのか」


 そのときだった。


「グルルル……」


「出たか」


 森の方から唸り声が聞こえる。今度は1匹じゃない。


「1、2……3匹か」


 灰色のウルフが3匹。俺を見ると、3匹同時に走り出してきた。


「丁度いい」


 俺が構えると、1匹目が飛びかかってきた。


「よっと」


 横に避け、そのまま拳を振る。


 ——ドゴッ!


 ウルフが勢いよく吹き飛ぶ。


「次!」


 2匹目が横から襲ってくる。俺は腕で攻撃を受け止めた。


「うん、軽いな」


 そのまま腕を振る。


 ——ドンッ!


 2匹目も吹き飛ぶ。最後の1匹が背後から迫ってくる。


「はっ!」


 振り返って拳を振る。


 ——ドゴォン!


 最後の1匹も地面を転がった。


「やったか……」


 静かになった。俺は3匹のウルフを見る。


「本当に倒せた」


 しかも、ほとんど苦戦していない。昨日までなら、3人の仲間がいても苦戦していた相手だ。それを俺1人で倒した。


「無茶苦茶だな」


 笑いが込み上げてくる。


「俺、こんなに強かったのかよ」


 嬉しい、凄く嬉しい。でも、それと同時に少しだけ悔しかった。もっと早く気づいていれば。俺がこの力を知っていれば。あいつらに必要ないと言われることもなかったんじゃないか。


「……いや」


 俺は首を振る。


「もう済んだことだ」


 追放されたことをいつまでも気にしていても仕方ない。ならば——。


「この力で好きにやってみよう」


 俺は倒したウルフから魔石を取り出した。これで依頼達成だ。初めてのソロ依頼。結果は――余裕だった。

 

 俺はそのまま王都へ戻った。ギルドの受付へ依頼書と魔石を渡す。


「ウルフ3体ですね。確認しました」


 受付のお姉さんが魔石を確認する。


「え?」


「どうしました?」


「い、いえ……」


 受付のお姉さんは魔石を見ながら首を傾げている。


「随分と大きな魔石ですね」


「そうなんですか?」


「はい。普通のウルフの魔石より、かなり大きいです」


「へぇ……」


 自分が倒したから大きくなった……なんてことはないよな。


「では、報酬をお渡しします」


「ありがとうございます」


 報酬を受け取り、俺はギルドを出る。とりあえず今日の宿代は稼げた。


「よしっ」


 俺は少しだけ気分が軽くなった。これなら、なんとかやっていけそうだ。


 ——その頃。王都の別の場所では、【星の剣】の3人が依頼を終えて戻ってきていた。


「ふん……」


 アルトは不機嫌そうな顔で歩いている。


「今日の依頼、妙じゃなかった?」


 リーナが言う。


「何がだ?」


「魔物よ。前より倒しにくかった」


「はぁ? 気の所為だろ」


 アルトはそう答えた。だが、本当はアルト自身も感じていた。いつもなら一撃で倒せる魔物に、何度も剣を振った。リーナの魔法も、いつもより威力が低かった。セシルの回復魔法もそうだ。


「まあいい」


 アルトは頭を振る。


「次はもっと強い魔物を狙うぞ」


「ええ」


「わかりました」


 3人は歩き続ける。そしてアルトは、ふと足を止めた。


「…………」


「どうかしたの?」


 リーナが聞く。


「いや」


 アルトは振り返る。そこにカイムはいない。当然だ。昨日、自分たちで追放したのだから。


「何でもない」


 アルトは再び歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。