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戦力外とみなされSランクパーティから追放されたけど、実は最強のバッファーです〜祖父は伝説の賢者です〜  作者: 青上黒影
第一章

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第16話 人影

 俺は黒い人影を睨む。


「下がれ。こいつは危険だ」


 俺だって感じている。目の前にいるこいつは魔物とは明らかに違う。


「何者だ」


 エレナが剣を構えた。黒い人影は少しだけ首を傾げる。


「私か? 私に名前などない」


 黒い人影が笑う。顔は見えない。それなのに、確かに笑っている。


「なら、こう呼べばいい」


 黒い人影が両手を広げた。


「影」


 何だこいつ。


 リゼットも杖を構えている。


「カイム」


「ん?」


「こいつ、魔力が変」


 リゼットの表情が険しい。


「魔力があるのに、ないみたい」


 エレナが一歩前へ出た。


「質問に答えろ。ここで何をしている」


 黒い人影は動かない。


「答える必要があるか?」


「ある」


「私にはない」


 エレナの魔力が僅かに高まる。


「ならば力ずくで聞く」


「待て」


 俺が止める。


「相手が何者かわからない」


「だから戦わないのか?」


「いや」


 俺は拳を握る。


「戦うならちゃんと準備してからだ」


 エレナは少しだけ黙る。


「今からリゼットとエレナにバフをかける」


「必要ない」


 エレナにはばっさりと断られたが。

 

「そう言うな」


 俺は2人へ手を向ける。


「【強化】」


 淡い光がリゼットとエレナを包む。リゼットは嬉しそうに杖を握る。エレナは自分の体を確認する。


「それだけか?」


 黒い人影が言う。


「準備は終わったのか」


 黒い人影は俺を見る。


「もっと見せてくれ。お前の力を」


 ……気持ち悪いな。


「断る」


 その瞬間、黒い人影が消えた。


「!?」


「カイム!」


 リゼットが叫ぶ。


 ——ドンッ!


「ぐっ!?」


 腹に衝撃が走った。俺の体が後ろへ吹き飛ぶ。


 ——ガシャァン!


 壁にぶつかり、古い家具を巻き込んで倒れる。


「カイム!」


 痛い。かなり痛い。でも。


「俺にもバフかけてるからな」


 俺は立ち上がる。黒い人影を見る。いつの間にか、俺がいた場所に立っていた。


「ほう」


 黒い人影が呟く。


「これでも倒れないか」


「残念だったな」


「面白い」


「俺は面白くない」


「なら」


 黒い人影が手を伸ばす。


「次はどうだ?」


「来るぞ!」


 エレナが叫ぶ。


 黒い人影の腕が伸びる。


「なっ!?」


 人間の腕とは思えない。黒い腕が鞭のように伸びてくる。


「【ファイアボール】!」


 ——ドォン!


 炎が広がる。が。


「効いてない!?」


 黒い腕は止まらない。


「【フレイムランス】!」


 ——ズドォン!


 黒い腕が大きく弾かれた。


「今だ!」


 エレナが地面を蹴る。


「はあっ!」


 剣が黒い人影を斬る。


 ——ズバッ!


「やったか?」


 俺が呟く。


「それ言うな!」


 リゼットが叫ぶ。


「絶対ダメなやつ! フラグだから!」


「今言われても困る!」


 黒い人影がゆっくり振り返る。斬られたはずなのに傷がない。


 エレナの表情が変わる。


「物理攻撃が効かない?」


 黒い人影は笑う。


「惜しいな。剣は悪くない」


 エレナを見る。


「だが、使い手が弱い。もっと力を出せ。お前の中にある力を」


 黒い人影が言った瞬間、エレナの剣が反応した。淡い光が剣から溢れる。


「エレナ?」


「違う」


 エレナが剣を見る。


「私がやっているんじゃない」


 黒い人影が笑う。まるでそれを待っていたように。


「その剣だ。その剣も必要だ」


 黒い人影は今度はエレナを指差した。


「探していたんだ。お前たちを」


「ふざけるな!」


 エレナが剣を構える。


「私を知っているのか!」


「知っている」


「何者だ!」


「言っただろう」


 黒い人影が笑う。


「影だ」


 エレナが走った。


「待て!」


 止めようとしたがもう遅い。エレナの剣が強く光る。


「はああっ!」


 剣を振り下ろす。


 ——ズドォン!


 家全体が揺れた。黒い人影が壁まで吹き飛ぶ。


「……!」


 今度は黒い人影の身体に傷がついていた。


「効いた!」


 リゼットが喜ぶ。


「やっぱり! 普通の攻撃じゃ駄目。でも、魔力を込めた攻撃なら効く!」


「じゃあ俺の拳は?」


「カイムはバフで殴って!」


「雑だなぁ」 

 

 そのとき。黒い人影が立ち上がった。


「素晴らしい


 黒い人影は傷口を見る。そこから黒い煙が漏れている。


「やはり」


 黒い人影が笑う。


「力を引き出す者」


 俺を見る。


「封印を破る者」


 今度はエレナを見る。


「2人とも、予想以上だ」


「封印を破る?」


 俺はエレナを見る。


「一体どういうことだ?」


 黒い人影がゆっくり後ろへ下がる。


「もういい」


「逃げるのか?」


 エレナが剣を構えると、黒い影はふっと笑った。


「次に会うときは」


 俺を見る。


「仲間を連れてこよう」


「仲間?」


「楽しみにしていろ」


 黒い人影の身体が、少しずつ薄くなっていく。


「お前の力は」


 黒い人影が笑う。


「まだ、そんなものではない。もっと強くなれ」


 ——シュン。


 黒い人影は消えた。しばらく誰も動かなかった。


「これで……終わったの?」


 リゼットが小さな声で聞く。


「戻ってくる可能性は?」


「ある」


「あるの!?」


 リゼットが叫ぶ。エレナは周囲を警戒している。


「まだ油断するな」


 俺たちはしばらく家の中を確認したが、黒い人影の姿はどこにもない。


「本当に消えたみたいだな」


「そうだね」


 リゼットが周囲を見る。


「あいつ何だったんだろう」


 さっきまで黒い魔力があった場所には今は何もない。


「他の冒険者たちは?」


「探そう」


 エレナが言う。


「この村のどこかにいるかもしれない」


 俺たちは廃村の調査を再開した。村の奥にある建物を調べたとき。


「ちょっと来て」


 リゼットが呼ぶ。


「何だ?」


「これ」


 リゼットが地面を指差している。


「地下への階段?」


 古い建物の床。その下に地下へ続く階段があった。


「……」


 俺はエレナを見る。


「どうする?」


「調べる」


「だよな」


 リゼットが杖を握る。


「今度こそ何が出てきても大丈夫!」


「さっき結構焦ってたけどな」


「それはそれ!」


 俺たちは地下へ続く階段を見る。暗く、奥が見えない。


「行くぞ」


 エレナを先頭に俺たちは階段を下り始めた。


 ——コツ。


 ——コツ。


 足音が響く。しばらく下りると、広い部屋があった。


「何だここ」


 壁には見たことのない文字が刻まれている。


「古代文字……?」


 リゼットが近づく。


「読めるのか?」


「少しだけ。魔法学院で勉強したから」


 リゼットが壁を見る。


「えーっと……」


 真剣な顔で文字を読む。


「……え?」


「どうした?」


「これ」


 リゼットの顔から笑顔が消えた。


「何が書いてある」


 エレナが聞く。リゼットはゆっくり振り返った。


「封印」


 壁に書かれていたのは。


「『災厄を封じる地』」


「…………」


 その瞬間、地下の奥から。


 ——ドクン。


 大きな音が響いた。


「……今の」


 俺たちは奥を見る。

 もう一度。


 ——ドクン。


 何かが動いている。エレナは剣を握る。リゼットが小さな声で呟く。


「ここ……ただの廃村じゃない」

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