第29話:思い出せ、俺は“生き残る”ために、ここにいる
「リオン様、次の会議は――。」
「延期で。」
俺は、書類の山を前に、椅子の背にもたれて目を閉じた。
ふと、思い出していたのだ。始まりのことを。
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異世界に来た日。特典も、加護も、なかった俺。
神様にすらスルーされ、何の力もないまま放り出された赤子。
「生き残らなきゃ、いけない」
それが、最初で唯一の目標だった。
だから俺は、人を育て、自分を守らせるために動いた。
最強の布陣――それは、戦士ではなく、“教えられる人間”だった。
今や、俺の布陣は国中に広がっている。
でも……
「……生き残れるのか?」
その問いが、ふいに胸をよぎった。
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そんなときだった。
王都に、緊急使者が訪れた。
「西の国境、帝国より“宣戦布告”あり!」
報告書には、こうあった。
『王国が、異常な速度で国力を増しつつある。
特に“民衆教育”による基礎戦力の底上げは、我が帝国への脅威である。
ゆえに、先制行動を取ると判断する』
静かに、でも確実に、それは“戦争”の始まりを告げていた。
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政務庁、緊急会議。
「ついに動いたか……。」
「育成庁の影響を、帝国が恐れたということですな。」
「リオン殿、これより“教育は停止”しますか?」
「――しません。」
俺は、立ち上がった。
「これが戦争の理由になるなら、“教育”は剣より怖いってことだ。
だったら――剣より強い“学びの盾”を、全国に配ってやろう。」
「しかし、現場の教師たちの安全は……!」
「そのために、“育成防衛班”を創設します。」
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■育成防衛班(通称:護学隊)
・各分校に配置される自衛支援部隊
・教員の避難・子どもの保護を優先
・必要時には物資運搬・情報伝達も担当
・王国軍とは別系統での独自指揮系統を整備
ロルフさんがぽつりとつぶやいた。
「……ついに、“戦時教育体制”に移行しますね。」
「うん。“生き残る”って、戦わないために準備することでもあるから。」
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リオン・フォン・エルトレード、4歳と8ヶ月。
かつて、ただの赤子だった少年は、今、“教育”を抱えたまま、“戦争”を迎え撃とうとしていた。
つづく。




