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転生特典のない俺は最強の布陣で異世界に挑む  作者:


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30/60

第30話:この日のための、“訓練”だったんだ

帝国軍、先遣部隊――騎兵百、歩兵千。


彼らが最初に踏み込んだのは、王国の西端にある小さな村だった。


「警戒を怠るな。連中、教育で強くなったとはいえ、所詮は……。」


しかし、その言葉は、村の門をくぐった瞬間にかき消された。


「……誰も、いない?」


民家には、炊き立ての釜。整った寝具。温かい湯の入った桶。


人の気配はある。が、影は一つもない。


「……罠か?」


そう思った将軍が、ふと気づいた。


広場の中央に置かれた木箱。中には、一枚の紙。


そこには――


『これは防災訓練の成果です』



---


数日前。育成庁本部。


「リオン様、もしもの場合の“避難計画”ですが――。」


「うん。既に“訓練マニュアル”は全国に配布してあるよ。」


「え……いつの間に……?」


「“もしものため”にやっておくのが“教育”ってもんだよ。」



---


育成庁では、密かに全国の分校・村落と連携し、以下の項目を訓練済みだった。


・指定避難所(“砦”)への退避ルート

・高齢者・乳児搬送のための交代班制

・避難時持出品チェックシート

・非言語伝達による緊急指示(リオン式ジェスチャー表記)


そして、いざという時――すべてが“作動”したのだった。



---


帝国軍が次に確認したのは、村の南西にある旧砦。


その上空に、旗が翻っていた。


《育成庁・西方避難拠点 第3号》


帝国軍が近づくと、砦の壁の上にズラリと並ぶ人影――


その数、およそ1万。


老いも若きも、教師も保護者も、全員が隊列を組んで避難していた。


「砦を包囲するか?」


「いや……。」


帝国の将軍は首を振った。


「ここを崩すには、“軍”ではなく、“訓練された社会”そのものを壊さねばならん。

……撤退する。“教育に統率された民衆”は、兵より恐ろしい。」



---


リオン・フォン・エルトレード、4歳と9ヶ月。


「出る杭」は、打たれなかった。


「出た杭」は、「鍛えられすぎて折れなかった」のだ。


次は、“戦争の本質”が問われる。


つづく。

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