表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生特典のない俺は最強の布陣で異世界に挑む  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/60

第26話:水は音もなく、王都を染める

それは、王都の教育省が受け取った、ひとつの無記名小包から始まった。


中には、簡素な綴じ本が5冊。タイトルは――


『ことばのまほう』

『すうじのなぞ』

『もののつくりとしくみ』

『えがおのれきし』

『おおきくなったら、なにになる?』


表紙に作者の名はない。ただ裏には小さく、手書きで一言。


「学ぶことは、遊ぶこと。」



---


最初に手を伸ばしたのは、王都西区の小学校教師だった。


「……教科書より、わかりやすい……?」


そう口にした瞬間から、王都に水がしみ込み始めた。


無記名教材は複製され、下層区の補習教室に配られ、数ヶ月後には“教材コンテスト”の最終選考にまで残るほどに。


その正体が“田舎の4歳児が作った教育群”だと、誰が気づくだろうか。



---


さらに――王都の教育界には、新しい顔ぶれが増えつつあった。


「彼女、どこの学院出身?」


「地方の育成所出身だそうです。“エルトレード式”という独自カリキュラムの……。」


名門学院の補助講師に就任したサーシャ。


子供に囲まれて、九九ラップを歌いながら大人気になっていた。


「“九九は音楽”です、これは私の原点なんです!」



---


貴族子女専門の家庭教師として雇われたのは、レオン。


「おやつの時間に伝令訓練?なんて新しい!」


「覚えやすいし、体も使えて、気分も良くなる!」


リオン式の教育法が、“娯楽を兼ねた有能な教育”として貴族家庭にもじわじわと広まり始める。



---


そしてある日。王都学術院の学長室で、こんな会話が交わされていた。


「最近、子供たちの基礎能力が底上げされている気がしますな。」


「教材改革の成果でしょうか?」


「……いや、誰が始めたのかも不明な“教材”があるそうです。あれの影響では?」


「ふむ……“リオン式”という名が裏で囁かれているとか……。」


学長は、苦笑した。


「まさか、4歳児が……ねぇ。」



---


育成所本部、執務室。


俺は、ロルフさんに報告を聞いてうなずいた。


「王都の初等学院で“数字は買い物で覚える方が早い”が通説になった?」


「はい。“音楽で覚える歴史年表”も、模倣例が多数あります。」


「……いいね。水みたいに広がっていくのが、俺のやり方だし。」


リオン・フォン・エルトレード、4歳と5ヶ月。


誰も気づかぬうちに、王都の教育は“静かに塗り替えられ”つつあった。


つづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ