第27話:私はしゃべらない。だって、“言葉”はもう育ってるから。
王都広場、中央公会堂。
今日は、「全国育成連盟 承認再審査」に伴う公開討論会――
いわば、“リオン式教育”への国としての是非を問う場である。
壇上には、王都教育省の長老派、名門貴族の子弟教育責任者たち、そして――
「登壇代表、リオン・フォン・エルトレード殿。」
俺は、静かに席に着いた。
場内にどよめきが走る。
「ほんとに来たのか……!」
「でもまだちっちゃい……。」
「発言、できるのか……?」
司会者が声を発した。
「では、反対派代表より、ご意見をお願いします。」
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「そもそも、子供に教育を教えるなど時期尚早。」
「音楽や遊びで学ぶなど、“型破り”も甚だしい!」
「貴族の伝統に干渉せぬこと、これは国家秩序の保全そのものだ!」
矢継ぎ早の批判が飛ぶ。
だが、俺は――しゃべらない。
ただ、膝の上のメモ帳を開いたまま、黙って聞いていた。
「おい、何も言わんのか?」
「これが代表の態度か?」
ざわつく場内。
しかしそのとき、ひとりの青年が立ち上がった。
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「すみません、発言しても?」
「……許可します。どちら様でしょう」
「私は王都西区で働く教師です。“あの教材”に救われた人間です」
彼は、無記名教材の話をした。
誰にも読まれなかった教科書。
沈黙していた教室。
それが、あの簡素な本で変わったと。
「“学ぶって、遊びじゃない”って思ってた。でも、“遊びのように夢中になること”が学びでした。」
彼に続いて、老漁師が立った。
「読み書きできねぇって、長年ごまかしてた。でも……息子に“字を教えてくれ”って言われた日、ああ、生き直せるって思った。」
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続々と立ち上がる人々。
元酒場の女将、木工村の父親、吟遊詩人の母、移住した保護者、そして――サーシャ、レオン、ミイナ。
「私は、教えてもらったんです。“学ぶって、誰かの未来を守る力”だって。」
「字を覚えたら、嘘を見抜けるようになった。“自由”が増えました。」
「僕たちは“人に頼れる”ようになった。“信じて学ぶ”って、そういうことだと思います。」
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司会者が静かに言った。
「……リオン殿、なぜお話しにならないのですか?」
俺は、ようやく顔を上げた。
「だって、話すまでもないじゃん。もう、“言葉”はみんなの中にあるから。」
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リオン・フォン・エルトレード、4歳と6ヶ月。
“声を上げなくても伝わる力”――それが教育だと、証明された日の記録である。
つづく。




