第八話 仕事が増える?
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
いつもの通り。
ライトは依頼書を眺める。
薬草採集。
森ウサギ討伐。
荷物運び。
色々ある。
「今日は何にしようかな」
悩んでいると。
「あっ」
聞き覚えのある声がした。
振り返る。
「エマ」
「ライト!」
エマが手を振っていた。
「どうした?」
「探してたの!」
「俺を?」
「うん!」
エマが元気よく頷く。
「お父さんが呼んでる」
「ガルドさん?」
「そう!」
ライトは首を傾げた。
何かあったのだろうか。
◇
ガルド商会。
昨日来たばかりの建物だ。
中へ入ると。
「おお、ライト君」
ガルドが笑った。
「こんにちは」
「忙しいか?」
「依頼探してました」
「そうか」
ガルドは少し頷く。
「ならちょうどいい」
机の上には木箱が置かれていた。
「届け物を頼みたい」
「依頼ですか?」
「依頼だ」
ライトの目が輝いた。
依頼。
素晴らしい言葉だった。
「受けます!」
即答だった。
ガルドが苦笑する。
「話を聞いてからにしなさい」
「あっ」
恥ずかしさをごまかすように。
頭を掻く。
「届け先は南通りのパン屋だ」
「パン屋」
「この箱を運んでほしい」
そう言って木箱を指差す。
ライトは持ち上げた。
「重い」
「だろう」
「何が入ってるんですか?」
「小麦粉だ」
「なるほど……っと」
いったん木箱を置く。
「報酬は銅貨三枚」
「受けます」
即答だった。
「早いな」
「三枚です」
大事だった。
夕飯が豪華になる。
◇
ライトは木箱を抱える。
よいしょ。
重い。
かなり重い。
「大丈夫か?」
「大丈夫です」
若干ふらついていた。
「無理なら言えよ?」
「運びます」
頑固だった。
ガルドは少しだけ笑った。
◇
商会を出る。
南通りを目指す。
しかし。
「重い……」
本当に重かった。
腕が痛い。
肩も痛い。
途中で休みたくなる。
でも。
「依頼だから」
頑張る。
その時。
頭の奥で声が響いた。
――《筋力強化 Lv1》を獲得しました
「お?」
まただった。
最近よく聞こえる。
「筋力強化?」
意味はなんとなく分かる。
その瞬間。
木箱が少しだけ軽く感じた。
「おお?」
気のせいかもしれない。
でも確かにさっきより楽だった。
そのまま歩き続ける。
運ぶ。
運ぶ。
ひたすら運ぶ。
そして。
再び頭の中に声が響いた。
――《運搬 Lv1》を獲得しました
「また!?」
今度はちゃんと聞こえた。
筋力強化。
運搬。
なんだか増えている。
理由は分からない。
でも。
「便利だからいいか」
ライトは深く考えなかった。
◇
南通り。
目的のパン屋へ到着する。
「こんにちは」
店主が顔を上げた。
「ん?」
「ガルド商会からです」
木箱を置く。
「おお、待ってた待ってた」
店主は嬉しそうに笑った。
「助かったよ」
どうやら本当に必要だったらしい。
「坊主、依頼か?」
「はい」
「偉いな」
頭を撫でられた。
少し恥ずかしい。
十歳だけど。
◇
帰り道。
ギルドへ向かう。
依頼完了である。
「終わった」
少し嬉しかった。
討伐もいい。
採集もいい。
でも。
こういう仕事も悪くない。
誰かの役に立っている感じがした。
◇
ガルド商会へ戻る。
「終わりました」
「早かったな」
「届けました」
ガルドは頷いた。
そして。
ちゃり。
銅貨三枚を置く。
「依頼達成だ」
「おお……」
やっぱり嬉しい。
「どうだった?」
エマが聞く。
「重かった」
「それだけ?」
「うん」
エマは笑った。
たぶん他にもあると思ったのだろう。
だが。
ライトにとっては重要だった。
本当に重かったのである。
その時。
ガルドがふと思い出したように言った。
「そういえば」
「はい?」
「最近、冒険者が足りないらしい」
「足りない?」
「ああ」
ガルドは少し眉をひそめた。
「依頼が増えてるんだ」
「へぇ」
ライトは頷いた。
依頼が増える。
つまり。
「仕事が増える?」
「そういうことだな」
ライトの目が輝いた。
◇
こうしてライトは初めて商会の依頼を終えた。
採集でもない。
討伐でもない。
運搬依頼。
小さな仕事だった。
だが。
町はたくさんの仕事で動いている。
それを少しだけ知ることができた。
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