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失恋から始まる冒険者生活 ~「依頼だから」と言い続けていたら世界を救っていました~  作者: 涙目


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第八話 仕事が増える?

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 いつもの通り。

 ライトは依頼書を眺める。


 薬草採集。

 森ウサギ討伐。

 荷物運び。


 色々ある。


「今日は何にしようかな」


 悩んでいると。


「あっ」


 聞き覚えのある声がした。


 振り返る。


「エマ」


「ライト!」


 エマが手を振っていた。


「どうした?」


「探してたの!」


「俺を?」


「うん!」


 エマが元気よく頷く。


「お父さんが呼んでる」


「ガルドさん?」


「そう!」


 ライトは首を傾げた。


 何かあったのだろうか。



 ガルド商会。

 昨日来たばかりの建物だ。


 中へ入ると。


「おお、ライト君」


 ガルドが笑った。


「こんにちは」


「忙しいか?」


「依頼探してました」


「そうか」


 ガルドは少し頷く。


「ならちょうどいい」


 机の上には木箱が置かれていた。


「届け物を頼みたい」


「依頼ですか?」


「依頼だ」


 ライトの目が輝いた。


 依頼。

 素晴らしい言葉だった。


「受けます!」


 即答だった。


 ガルドが苦笑する。


「話を聞いてからにしなさい」


「あっ」


 恥ずかしさをごまかすように。

 頭を掻く。


「届け先は南通りのパン屋だ」


「パン屋」


「この箱を運んでほしい」


 そう言って木箱を指差す。


 ライトは持ち上げた。


「重い」


「だろう」


「何が入ってるんですか?」


「小麦粉だ」


「なるほど……っと」


 いったん木箱を置く。


「報酬は銅貨三枚」


「受けます」


 即答だった。


「早いな」


「三枚です」


 大事だった。


 夕飯が豪華になる。



 ライトは木箱を抱える。


 よいしょ。


 重い。


 かなり重い。


「大丈夫か?」


「大丈夫です」


 若干ふらついていた。


「無理なら言えよ?」


「運びます」


 頑固だった。


 ガルドは少しだけ笑った。



 商会を出る。


 南通りを目指す。


 しかし。


「重い……」


 本当に重かった。


 腕が痛い。


 肩も痛い。


 途中で休みたくなる。


 でも。


「依頼だから」


 頑張る。


 その時。

 頭の奥で声が響いた。


 ――《筋力強化 Lv1》を獲得しました


「お?」


 まただった。

 最近よく聞こえる。


「筋力強化?」


 意味はなんとなく分かる。


 その瞬間。

 木箱が少しだけ軽く感じた。


「おお?」


 気のせいかもしれない。


 でも確かにさっきより楽だった。


 そのまま歩き続ける。


 運ぶ。


 運ぶ。


 ひたすら運ぶ。


 そして。

 再び頭の中に声が響いた。


 ――《運搬 Lv1》を獲得しました


「また!?」


 今度はちゃんと聞こえた。


 筋力強化。

 運搬。


 なんだか増えている。


 理由は分からない。


 でも。


「便利だからいいか」


 ライトは深く考えなかった。



 南通り。

 目的のパン屋へ到着する。


「こんにちは」


 店主が顔を上げた。


「ん?」


「ガルド商会からです」


 木箱を置く。


「おお、待ってた待ってた」


 店主は嬉しそうに笑った。


「助かったよ」


 どうやら本当に必要だったらしい。


「坊主、依頼か?」


「はい」


「偉いな」


 頭を撫でられた。


 少し恥ずかしい。


 十歳だけど。



 帰り道。

 ギルドへ向かう。


 依頼完了である。


「終わった」


 少し嬉しかった。


 討伐もいい。

 採集もいい。


 でも。

 こういう仕事も悪くない。


 誰かの役に立っている感じがした。



 ガルド商会へ戻る。


「終わりました」


「早かったな」


「届けました」


 ガルドは頷いた。


 そして。


 ちゃり。


 銅貨三枚を置く。


「依頼達成だ」


「おお……」


 やっぱり嬉しい。


「どうだった?」


 エマが聞く。


「重かった」


「それだけ?」


「うん」


 エマは笑った。


 たぶん他にもあると思ったのだろう。


 だが。

 ライトにとっては重要だった。


 本当に重かったのである。


 その時。

 ガルドがふと思い出したように言った。


「そういえば」


「はい?」


「最近、冒険者が足りないらしい」


「足りない?」


「ああ」


 ガルドは少し眉をひそめた。


「依頼が増えてるんだ」


「へぇ」


 ライトは頷いた。


 依頼が増える。


 つまり。


「仕事が増える?」


「そういうことだな」


 ライトの目が輝いた。



 こうしてライトは初めて商会の依頼を終えた。


 採集でもない。

 討伐でもない。


 運搬依頼。

 小さな仕事だった。


 だが。

 町はたくさんの仕事で動いている。


 それを少しだけ知ることができた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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