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失恋から始まる冒険者生活 ~「依頼だから」と言い続けていたら世界を救っていました~  作者: 涙目


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第九話 ちなみに報酬は?

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 いつもの通り。

 ライトは掲示板の前に立っていた。


 薬草採集。

 森ウサギ討伐。

 荷物運び。


 色々ある。


「今日は何にしようかな」


 悩む。

 依頼はたくさんある。


 だが一日で受けられるのは一つだけだ。


 その時だった。


「どうすんだよ!」



 大きな声が響いた。

 ライトが振り返る。


 ギルドの入口近く。


 三人の冒険者が険しい顔で話していた。


「今日出発だぞ!」


「俺に言われても困る」


「だから困ってるんだろ!」


「代わりなんかすぐ見つからねぇよ!」


 かなり揉めていた。


 ライトは首を傾げる。


 何があったのだろうか。



 とりあえず知っている人に聞く。

 ライトは受付へ向かった。


「あの」


「はい?」


 ミーナが顔を上げる。


「喧嘩ですか?」


 入口を指差す。

 ミーナは苦笑した。


「ああ、違う違う」


「違うんですか?」


「荷物持ちが逃げたのよ」


「逃げた?」


「そう」


 ミーナは頷く。


「護衛依頼があるんだけどね」


「はい」


「雇ってた荷物持ちが今朝いなくなったらしいの」


「大変ですね」


 本当に大変そうだった。


 出発直前である。


 ミーナは少し考えた。


 そして。


「あ」


 何かを思い付いた顔になった。


「?」


 ライトは嫌な予感がした。


「ライト君」


「はい」


「やってみる?」


「はい?」


 次の瞬間。

 ミーナは受付を飛び出した。


「ちょっと待っ──」


 止める間もなかった。



「いたわ!」


 三人の冒険者が振り向く。


「代わり見つかった!」


「本当か!?」


「見つかったわよ!」


 ミーナは満足そうだった。


 ライトは状況がよく分かっていない。


 そのまま連れて行かれた。



 三人の前に立つ。


 一人は盾を背負った男。

 一人は斧を持った大男。

 一人は弓を持った女性。


 全員強そうだった。


 特に斧の人が怖い。


 とても怖い。


「この子?」


 弓の女性が言った。


「この子よ」


 ミーナが頷く。


 盾の男がライトを見る。


「荷物持ち引き受けてくれるっていうのは君かい?」


「???」


 本当に分からなかった。



「つまりね」


 ミーナが説明する。


「荷物を運ぶ仕事よ」


「荷物」


「護衛はこの人たちがやる」


「はい」


「ライト君は荷物持ち」


「なるほど」


 少し分かった。


 荷物運びなら知っている。


 ガルド商会でもやった。



「ちなみに報酬は?」


 ライトが聞く。


 大事なことだった。


 盾の男が答える。


「銀貨一枚」


「やります」


 即答だった。


 三人が固まった。


「早っ」


 弓の女性が言う。


「早いな」


 盾の男も言う。


 だがライトは真剣だった。


 銀貨一枚なら銅貨十枚分。


 薬草採集二回分より多い。

 森ウサギ討伐よりも多い。 


 今まで受けたどの依頼より高い。


 それだけで十分だった。


「本当に大丈夫か?」


 盾の男が聞く。


「荷物運びですよね?」


「そうだ」


「やります」


 やはり即答だった。


 盾の男が苦笑する。


「一応、危険はあるんだがな……まあいいか。俺はレオン」


「ライトです、構いません」


「こっちはダグ」


「……」


 斧の大男が軽く手を上げる。


 怖かった。


「アイラよ」


 弓の女性も名乗る。


「よろしくお願いします」


 ライトはぺこりと頭を下げた。


「じゃあ依頼主のところへ行くか」


 レオンが言った。


「依頼主?」


「行商人だ」


 レオンはギルドの外を指差した。


「名前はセシル」


 こうしてライトは。


 初めての長距離依頼へ向かうことになった。



 レオンはギルドの外を指差した。


「依頼主の名前はセシル」


 ライトも外を見る。


 そこには荷馬車が止まっていた。


 そして。

 荷馬車の横で女性が一人、箱を数えている。


「いたいた」


 レオンが歩き出す。


 ライトも後を追った。



「セシル」


 レオンが声を掛ける。


 女性が振り返った。


「どうだった?」


「見つかった」


 セシルが安心したように息を吐く。


「本当に?」


「ああ」


 そして。

 レオンはライトの肩に手を置いた。


「こいつだ」


 セシルはライトを見る。


 少し驚いた。


「え?」


 視線が下がる。


 さらに下がる。


「……子供?」


「十歳です」


 ライトが答えた。


「十歳!?」


 セシルが目を丸くする。


「大丈夫なの?」


 セシルがレオンへ聞く。


「戦わせるわけじゃない」


「それはそうだけど」


「荷物持ちだ」


「それでも十歳よ?」


 セシルは少し心配そうだった。


 その時。


「大丈夫です」


 ライトが言った。


 全員が見る。


「荷物運びならやったことあります」


「本当に?」


「昨日やりました」


「昨日」


 なんとも言えない空気になった。


「報酬は聞いてる?」


 セシルが尋ねる。


「銀貨一枚ですよね」


「うん」


「大丈夫です」


 即答だった。


 やる気に満ちている。


 セシルは少しだけ笑った。


「変わった子ね」


「よく言われます」


「本当に?」


「最近」


 ミーナ。


 リリア。


 ガルド。


 色んな人に言われた。


 なので本当なのだろう。


「まあ、本人がいいならいいじゃないの」


 アイラが言った。


「荷物持ちなら十分でしょ」

「私たちがいるんだから」


「そうね」


 セシルも頷く。


 人手不足なのは事実だった。


「じゃあ改めて」


 セシルが手を差し出した。


「私はセシル」


「ライトです」


 握手する。


「今回の依頼主よ」


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 セシルは少し笑った。


 礼儀正しい子だった。


「出発は一時間後」


 レオンが言う。


「それまでは荷物確認だ」


「荷物?」


「ああ」


 荷馬車の後ろには箱が積まれていた。


 かなり多い。


「これ全部ですか?」


「全部だ」


「おお……」


 思わず声が漏れた。


 ライトは近付いてみる。


 箱。

 樽。

 袋。


 色々ある。


「何が入ってるんですか?」


 するとセシルが嬉しそうに答えた。


「調味料」


「へぇ」


「布」


「おお」


「干し肉」


「なるほど」


 知らないものもある。


 知っているものもある。


「行商人って色んな物を運ぶんですね」


 ライトが言う。


 セシルは頷いた。


「町ごとに売る物も買う物も違うからね」


「そうなんですか」


「例えばこの町は食料が多い」


「はい」


「でも隣町は布が安いの」


「へぇ」


 ライトは感心した。


「だから運ぶのよ」


 セシルが荷馬車を軽く叩く。


「必要な場所へ」


「なるほど」


 少しだけ分かった気がした。


 その時だった。


「ライト」


 レオンが呼ぶ。


「はい」


「荷物持ちなら覚えておけ」


「はい」


「街道では周りをよく見ろ」


「見る?」


「ああ」


 レオンは真面目な顔だった。


「戦えなくてもいい」


「はい」


「でも危険は見つけろ」

「そして、すぐに避難しろ」


 ライトは頷く。


「分かりました」



 そして。


 人生初の長距離依頼が始まろうとしていた。


 銀貨一枚。


 今までで一番大きな依頼。


 ライトは少しだけ胸を躍らせる。


「頑張ろう」


 そう呟きながら。


 荷物の積み込みを手伝い始めた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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