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失恋から始まる冒険者生活 ~「依頼だから」と言い続けていたら世界を救っていました~  作者: 涙目


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第五話 報酬がいいので

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌日。

 ライトは再び森へ来ていた。


 隣にはリリアがいる。


「本当に来た」


「来ますよ」


「ふーん」


 リリアは少しだけ笑った。


 森ウサギ討伐。

 報酬は銅貨七枚。


 ライトは気に入っていた。


 危険は少ない。

 報酬も悪くない。


 何より。


「夕飯がおいしい」


「なにそれ」


 リリアは呆れた。



 森の中を歩く。


 その時。


「いた」


 リリアが指差した。


 森ウサギだった。

 木の根元で草を食べている。


 ライトは石を拾った。


 狙う。

 投げる。


 外れた。


「惜しい」


「本当ですか?」


「半分くらい」


「遠いなぁ」


 もう一度。

 石を拾う。

 投げる。


 今度は当たった。


 ゴッ。


 森ウサギが転がる。


「やった!」


「おめでとう」


 リリアが拍手する。

 少しだけ誇らしかった。


 そのまま討伐を続ける。


 一匹。

 二匹。

 三匹。


 少しずつ慣れてきた。


 外れる回数も減る。

 狙った場所へ飛ぶようになってきた。


 その時。

 茂みが大きく揺れた。


 ガサガサッ!


「!?」


 ライトが振り向く。


 飛び出してきたのは森ウサギではなかった。


 犬ほどの大きさのネズミ。


 頭には短い角がある。


「角ネズミ!」


 リリアが叫ぶ。


「逃げて!」


 ネズミはライトへ向かって突っ込んできた。


 速い。

 本当に速い。


 だが。

 ライトは動かなかった。


 いや。

 動けなかった。


 怖い。


 怖かった。


 今まで生き物と戦ったことなどない。

 村では畑仕事ばかりだった。


 だから足が止まった。


「ライト!」


 リリアの声。


 その瞬間。

 頭に浮かんだのは依頼だった。


 そして。

 ギルドの夕飯。


 昨日の肉入りスープ。


 銅貨七枚。


 生きる。


 働く。


 食べる。


 逃げたら。


 無くなる。


「嫌だ」


 ライトは石を掴んだ。


 投げる。


 思い切り。


 全力で。



 ゴッ!!



 角ネズミの鼻先に命中した。

 角ネズミが怯む。


 その隙に。

 リリアの石が飛んだ。


 再び命中。


 角ネズミが倒れる。


 静寂。


「はぁ……」


 ライトは大きく息を吐いた。

 膝が震えている。


「大丈夫!?」


 リリアが駆け寄る。


「大丈夫です」


「全然大丈夫そうじゃない」


「怖かったです」


「当たり前でしょ!」


 リリアは呆れた。


 だが。

 少し安心もした。


 逃げずに立ち向かったからだ。


「でも」


 ライトは倒れた角ネズミを見る。


「逃げたくなかったんです」


「なんで?」


 ライトは真面目な顔で答えた。


「せっかくお金が稼げるようになったので」


 リリアは黙った。


「……本当にお金好きね」


「大事です」


 当然だった。


 その瞬間。


 頭の奥で声が響く。


 ――《投石 Lv2》になりました。


「お?」


 まただった。


 今度は獲得ではない。


 レベルが上がったらしい。


「投石レベル2?」


「何が?」


 リリアが首を傾げる。


「頭の中の声です」


「また聞こえたの?」


「はい」


「今度は何て?」


「『投石レベル2になりました』って」


 リリアは一瞬きょとんとした。


 そして納得したように頷く。


「ああ、神の啓示ね」


「神の啓示?」


「スキルを覚えたり、レベルが上がった時によく聞こえるやつ」


「みんな聞こえるんですか?」


「聞こえるわよ」


 ライトは少し驚いた。


「じゃあ、投石レベル2になったんですか?」


「たぶんね」


「たぶん?」


「確認してないから」


 リリアは肩を竦める。


「ギルドに戻ったらカード更新できるわよ」


「更新?」


「ギルドの水晶と同じ様にカードに表示されるの」


「おお」


「今どんなスキルを持ってるかも見られるし」


「便利ですね」


「便利よね」


 互いに笑い合う。

 リリアは少し考えて。

 さらに教えてくれた。


「生活系は比較的覚えやすいかな」


「歩行とか?」


「そうそう。あとは採集とか」


「投石は?」


「それは人によるかな」


「そうなんですね」


 少し考えてからライトは尋ねた。


「リリアさんは何の職業なんですか?」


「私は《狩人》」


 リリアは胸を張った。


「だから投石とか追跡とか覚えやすいの」


「なるほど」


「職業系は滅多に覚えられないけどね」


「そうなんですね」


 また一つ賢くなった。


「ライトの職業は?」


「《  》です」


「え?」


「空欄でした」


 リリアが固まった。


「……空欄?」


「はい」


「そんなことあるの?」


「教会でも言われました」


「えぇ……」


 リリアは困惑した。


 だが本人は気にしていない。


「でも冒険者はできるそうです」


「そういう問題かなぁ……」


 リリアは首を傾げた。


 やっぱり変な人かもしれない。


 そんなことを思いながら、

 二人は依頼を続けた。



 夕方。

 二人は依頼を終えて町へ戻る。


「また明日も来る?」


 リリアが聞いた。


「来ます」


 即答だった。


「森ウサギ?」


「報酬がいいので」


 リリアは吹き出した。


「それに」


 リリアが目を瞬かせる。


「石が当たるようになってきたので」


 リリアは少しだけ笑う。


「分かった、じゃあまた明日」


「はい」


 こうしてライトとリリアは少しだけ仲良くなった。


 まだ友達と呼ぶには早い。


 だが知り合いよりは近い。

お読み頂き、ありがとうございます。

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