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失恋から始まる冒険者生活 ~「依頼だから」と言い続けていたら世界を救っていました~  作者: 涙目


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第三話 うまい……

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 翌朝。

 ライトは町を出た。


 昨日はミーナからギルドに置いてある薬草の実物を見せてもらい、魔物についても教えてもらった。


 そして、そのままギルドの空き部屋に一泊した。


 今朝はわくわくしすぎて早く起きてしまった。

 人生初の依頼である。


 これでやっとお金が稼げる!


 銅貨五枚。

 夕飯が豪華になる。


 ライトは足取り軽く森へ向かった。



 森は静かだった。


 鳥の鳴き声。

 風の音。

 葉が揺れる音。


「おお……」


 ライトは少し感動した。


 村にも森はあった。

 だが町の近くの森は少し違う。


 見たことのない植物がある。

 見たことのない花がある。


 全部新鮮だった。


「確か葉っぱの裏が白いんだよな」


 昨日見せてもらった薬草を思い出す。


 常緑草。

 依頼の対象。

 十本で銅貨五枚。


 今のライトにとっては大金だった。



 しばらく歩く。


 草を見る。

 ひっくり返す。

 違う。


 また見る。

 違う。


 さらに見る。

 違う。


「難しいな……」


 思った以上に難しかった。

 草は全部同じに見える。


 だが諦めない。

 銅貨五枚がかかっている。



「あ」


 見つけた。

 葉の裏が白い。


 形も昨日見たものと同じだった。


 そっと摘み取る。


「一本」


 嬉しかった。

 初めての成果である。


 少し歩く。

 また見つける。


「二本」


 さらに歩く。


「三本」


 だんだん分かってきた。


 葉の形。

 色。

 生えている場所。


「なるほど」


 薬草にも特徴があるらしい。



 その時だった。


 ガサッ。


「ん?」


 茂みが揺れた。


 ライトは身構える。


 昨日聞いた話を思い出す。


 森には魔物がいる。

 弱くても危険。

 無理なら逃げろ。


 ミーナはそう言っていた。


 再び草むらが揺れる。


 そして。

 白い何かが飛び出した。


「うわっ!」


 思わず後ろへ飛び退く。


 だが。


 ピョン。


 ピョン。


 そのまま走り去った。


「うさぎ?」


 頭に短い角が生えていた。


 たぶん昨日聞いた。


 森ウサギ。


 魔物だった。


「本当にいたんだ……」


 少しだけ感動した。


 少しだけ怖かった。


 でも向こうから逃げていった。


「よし」


 依頼に戻る。


 戦う理由もない。


 今は薬草の方が大事だった。



 一時間後。


「八本」


 二時間後。


「九本」


 三時間後。


「十本!」


 ライトは大きく息を吐いた。


 集まった。


 依頼達成である。


 思わず笑顔になる。


「やった」


 その瞬間。

 頭の奥で声が響いた。


 ――《採集 Lv1》を獲得しました。


「おお?」


 昨日も聞いた。

 頭の中に響く不思議な声だ。


 今度は聞き逃さなかった。


「採集?」


 薬草を採ること?

 よく分からない。


 でも。

 なんとなく薬草が見つけやすくなった気がした。


「不思議だな」


 ライトは首を傾げた。


 だが深く考えない。


 今は依頼達成の方が大事だった。



 町へ戻る。

 冒険者ギルドへ入る。


 昨日ほど緊張しない。


 もう知っている場所だからだ。


「あら、おかえり」


 ミーナが気付いた。


「帰りました!」


「どうだった?」


「取れました!」


 ライトは薬草を机へ並べる。


 ミーナが確認する。


 一本。

 二本。

 三本。


 ……


 十本。


 全部見終えたミーナが頷く。


「全部正解」


「本当ですか!」


「ええ」


 ライトは思わず拳を握った。


「依頼達成よ」


「おお!」


 胸が熱くなる。


 それだけで嬉しかった。


 自分の力で終わらせた依頼。


 初めて稼いだお金。


 ミーナが銅貨を並べる。


 ちゃり。

 ちゃり。

 ちゃり。

 ちゃり。

 ちゃり。


 銅貨五枚。


 約束通りだった。


「どうしたの?」


「増えてる」


「増えてるわね」


「昨日は三枚でした」


「そうね」


 ミーナは少し笑った。


 本当に嬉しいらしい。


「おめでとう」


「ありがとうございます!」


 ライトは銅貨を握りしめた。


 温かかった。


 自分で稼いだお金だった。



 その日の夕飯。

 ライトは少しだけ奮発した。


 普段なら買わない肉入りスープ。

 そして焼き立てのパン。


「うまい……」


 感動した。


 働いた後のご飯は美味しかった。


 村にいた頃も手伝いはした。


 だが今は違う。


 これは自分が生きるために稼いだお金だ。


 だから嬉しかった。



 こうしてライトは人生最初の依頼を達成した。


 派手な戦いはない。

 魔法もない。

 英雄譚にはほど遠い。


 だが。

 ライトにとっては大きな一歩だった。


 自分で働き。

 自分で稼ぎ。

 自分で食べる。


 それを初めてやり遂げた。


「明日も頑張ろう」


 そう呟きながらパンをかじる。

お読み頂き、ありがとうございます。

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