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螺旋の乙女 〜乳白色のセラミックパンク〜  作者: 麻澱灰


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蛙又編み

今日はあいにくの雨。お外には行けない。

羊たちの毛に炭の粉をまぶしてクシで丁寧にとかしてあげたり、鶏さんたちの場所を掃き掃除したりしたけれど、すぐにお仕事がなくなってしまった。

暇を持て余してゴロゴロしている私に、お兄さんがひょいと不思議なものを渡してきた。


「……ベルタ。……これ、あそび」


それは、長い紐の先に小さな「わっか」がついたものだった。

お兄さんは見本を見せてくれた。少し離れたところに立てた木の枝を目掛けて、その紐をふわりと投げる。すると、わっかが魔法みたいに枝に引っかかって、お兄さんが手元に手繰り寄せると、枝がズルズルと引き寄せられてきた。


「えっ、すごいや! おにいさん、私にもやらせて!」


意気揚々と挑戦してみたけれど、これがちっともうまくいかない。投げても投げても、わっかは枝の手前で力なく落ちたり、全然違う方向に飛んでいったり。

ああでもない、こうでもない。私はムキになって、何度も何度も紐を投げ続けた。


ふと横を見ると、お兄さんはずっと座ったまま、冬から作り溜めていた柳の皮の紐で何かを編んでいた。

指先をリズミカルに動かし、紐と紐を「結び目」で繋いでいく。


「……かえるまた、あみ。……ノードと、エッジ」


お兄さんの手元では、同じ動作が何度も繰り返され、四角い網目がどんどん増えていく。お兄さんの時間は、まるで静かな川の流れみたいに、一定の速さで形を作っていく。


それに対して私の時間は、わっかを投げては拾い、投げては拾いの繰り返し。

随分と時間が経って、腕が少しだるくなってきた頃。

ふわりと投げたわっかが、吸い込まれるように木の枝にすとんと落ちた。


「……やった! おにいさん、見て! 引っかかった!」


引き寄せると、ちゃんと枝がついてくる。

おにいさんは作業を止めて、小さく頷いてくれた。

「……リピート、成功。……スローの、精度、あがった」


お兄さんの手元を見ると、いつの間にか大きな網が完成していた。

お兄さんはその端っこに、ずっしりと重たい石を結び付けている。


「……おにいさん、それ、なあに? 布じゃないし、袋でもないみたい」

「……ねっと。……ひろがる、わな」


おにいさんは完成した網を大事そうに畳んだ。

私の「わっか」と、おにいさんの「あみ」。

これが合わさった時、いったい何が起きるんだろう。雨の音を聞きながら、私はおにいさんが作った不思議な模様の網を、いつまでも眺めていた。

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